ついに解った上海株急落のメカニズムとタイミング~引き起こすのは習近平その人の行動

とんでもないジンクス

2月2日、上海株は1.46%も落ちて2730.1ポイントの終値でその週の取引を終えた。昨年12月12日までに上海総合指数は3000ポイントの大台を長く維持してきたが、13日にそれを割り、2月2日までの47日間、株価は9%以上も下落した。

そして、この47日間における上海株下落の軌跡を追っていくと、それはどうやら、習近平主席の動きとは強い関連性があるのではないかというとんでもない「ジンクス」が姿を現した。

2023年12月20日 by Gettyimages

2023年12月20日 by Gettyimages© 現代ビジネス

まずは昨年12月13日、上海株が3000ポイント台を割れた直前の習主席の動きを見ると、彼は11日に始まった「中央経済工作会議」で重要講話を行なって12日はベトナム訪問へと出発した。そして12日に閉幕の「経済工作会議」の情報が中央テレビ局で伝えられたのは当日の晩、13日の人民日報朝刊一面には関連記事は習主席の顔写真と共に大きく掲載された。

しかしまさに13日、取引開始から上海株がいきな3000ポイントを割り、上海総合指数は2968.7の終値で1.15%も落ちた。

株価下落の理由は真面目に分析すれば、「中央経済工作会議」の打ち出した、あまりにもいい加減な「経済振興策」に対する市場の絶望感であろうと思われるが、とにかく、「習近平は動けば上海株が落ちる」というようなことは現実に起きた。外貨定期預金 1ヶ月もの

外貨定期預金 1ヶ月もの

PR

ソニー銀行

重要講話の翌日にまた

それ以来、上海株はずっと2900ポイント台で彷徨い、年明けの1月2日には2972.7の始値で今年の取引を開始した。1月の第2週に入ってから上海株が多少落ちて2900ポイント台を割ったが、それでも大きく落ちることはなく、1月16日の終値は2893.9ポイント、2900ポイント台の回復を目の前に迫っていた。

しかし、まさにこの1月16日という日、偉大なる習近平主席様はまたもや大きく動いた。彼は李強首相以外の最高指導部メンバー全員を率いて中国共産党中央党校の「省・部級主要幹部の金融発展推進学習班始業式」に出席して「重要講話」を行ったことは1月25日掲載の本欄が取り上げたところだが、よりによって「金融」に関するこの「重要講話」を行なった翌日の17日、上海の株市場には再度の災難が降りかかってきた。

前日の16日、海外にいた李強首相は昨年の成長率が5.2%の高い数値であることを誇らかに発表したが、にもかかわらず、17日の上海株は2.09%も急落し、2833.6の終値で2020年6月以来の低い数字となった。「習近平は動けば上海株下落」は再び証明された。

それ以来上海株は下がり続け、1月22日には2800ポイント台を割り、2756.3の終値となった。そして上海株は再び上昇を始めたのは24日。その日、中国人民銀行が預金準備率を0.5%引き下げるなど、中央政府が一連の経済刺激策を打ち出したことを受け、上海総合指数は2800ポイント台を回復した。そして1月30日には、2800ポイント台を維持したまま、2830.5の終値で取引を終えた。

病魔の噂、しかし市場の反応は

25日から29日までの5日間、習主席は中仏国交60周年祝賀会に向け、事前録画のテレビ演説を行った以外に、公の場に出たことは一切ない。その代わりに、彼が膵臓癌にかかったとの噂が国内外で広がった。

そしてまさにこの「習近平不在」の期間中において、上海株は久しぶりの小康状態を保つことはできた。要するに習主席が大人しくしていれば、上海株は至って安泰なのだ。

習主席は再び公に出たのは1月30日、その日、彼は軍関係の恒例行事に元気な姿で現れる一方、42カ国の大使から国書を受け取った。「習近平膵臓癌」の噂はこれで見事に取り消された。

そしてそのことが同日の夕方の中央テレビニュースで大きく報じられると、翌日の1月31日、上海株は取引開始から急落、再び2800ポイント台を割って、2788.5の終値となった。2月2日、上海株は2730.1にまで落ちていたことは冒頭から記した通りである。習主席が動いたその翌日、上海株はやはり急落したのではないか。セット定期特別金利キャンペーン

セット定期特別金利キャンペーン

PR

ソニー銀行

もはや偶然とは思えず

このようにして昨年12月中旬から今年1月末まで、上海株は「12月13日急落」、「1月17日急落」、そして「1月31日急落」、という3回の急落を経験して現在に至っているが、3回とも、その前日に置いて習主席が大きな動くを見せてくれた。そんなのは、ただの偶然だったのだろうか。

逆に、習主席がじっとしていて姿を見せなかった1月25日から29日までの間、上海株が小康状態を保ったのは前述の通りだが、それもまた、単なる偶然なのだろうか。

人間世界では、一度だけの偶然は偶然かもしれないが、数回も繰り返された偶然はもはや偶然ではない。やはり習主席こそは上海株市場にとっての祟り神であって、「習近平が動ければ上海株が落ちる」というジンクスはまさにジンクスとして成り立つのであろう。

1月30日以後の習主席の動きを見ると、彼は31日と2月1日の2日間、北京で中央政治局会議と政治局勉強会を主宰し恒例の「重要講話」を行った。そして2月2日には天津を視察した。「習近平は動けば上海株が下がる」というジンクスからすれば、本来、2月3日からの上海株が落ちることになっているはずだが、幸いか残念か、3日と4日の両日は土日なので株市場は休み。しかし週明けの2月5日、上海株はやはり1%以上も下落して、終値が2700ポイント台を割る直前の2702.1ポイントなった。

そして翌日の2月6日、上海株は大幅に反発し上海総合指数が3.2%も上昇したことは世界の株価関係者のよく知るところである。上昇した理由について、日本経済新聞などは「相次ぐ相場支援策を好感」だと解釈しているが、本稿のややふざけた解釈からすれば、前日の2月5日、習主席はいっさい動かなかったことこそはその最大の原因ではないのか。

中国と中国経済と中国株にとっての貧乏神

以上では、「習主席の動きと上海株との関連性」を冗談っぽい形で解説して見せたが、現実的にはやはり、習主席の金融市場に対する考え方と姿勢には大きな問題がある。彼は以前、金融問題にかんする「講話」で次のような発言を行ったことがある。いわく「財産性収入の早すぎる増大は防止すべきであり、特に、金融市場で投機的収入を取得することを制限すべきである」と。

このようなとんでもない発言からも分かるように、習主席は明らかに、株売買に対しては一種の前近代的な偏見を持ち、それを敵視する態度をとっていることがよく分かる。金融市場は「制限しなければならない」というのはむしろ彼の一貫とした考えであろう。このような考え方の持ち主である習主席の独裁的指導下では、中国の株市場は振るうようなことは当然ないし、中国経済全体も元ますます衰退していくしかない。

言ってみれば、中国の株式市場と中国経済にとっての祟り神・貧乏神はまさに、習近平主席その人なのである。

タイトルとURLをコピーしました