宇宙航空研究開発機構(JAXA)は14日、国産新型のH3ロケット2号機を17日に種子島宇宙センター(鹿児島県)から打ち上げると発表した。2号機の開発には東北の企業や研究機関も携わっており、エンジン関係の部品13種の加工は精密研磨加工のエヌエス機器(石巻市)が担った。阿部秀敏社長(64)は「小さな会社でも大きなプロジェクトに携われる。努力が実る幸せを感じる」と喜びをかみしめる。
20年磨き上げた技術で1段目エンジン部品加工 17日打ち上げへ
JAXAは当初、2号機を15日に打ち上げる予定だったが、悪天候が予想されるとして延期した。
エヌエス機器が携わったのは1段目のエンジン。駆動源となるターボポンプ関係の部品で、研磨することで燃料の流れをスムーズにする。
部品といっても一つ数キロから60キロに及ぶ大型品。不要なバリの切削から磨きまで、半日から3日がかりで仕上げる。削り残しも、削り過ぎてもいけない、精巧さが求められる。
2017年ごろ、前身のH2Aロケットのターボポンプの部品を請け負い始めた。IHIキャスティングス(ICC、東京)の下で航空機部品の加工を始め、業務を広げた。担当者は相馬市にあるICCの工場に連日のように通い、技術とノウハウを高めた。
ロケット部品の研磨を一から研究し、けん引役となった製造部長の高橋盛二さん(43)と、現在の担当リーダー佐々木広貴さん(44)は「ロケットの部品を手がける。そのモチベーションが全体の技術を底上げした」と振り返る。
エヌエス機器は、自動車関連の部品製造会社として阿部社長が1986年に創業。バブル崩壊の苦境を経て2000年代初めに研磨加工に踏み出した。約20年にわたり磨き上げた技術が宇宙開発に活用されることに、阿部社長は「社員の一層の誇りになる」と語り、打ち上げの成功を祈った。
JAXAなどが開発したH3は、現在の主力H2Aの後継機となる2段式液体燃料ロケット。打ち上げは昨年3月に1号機が失敗して以来、約1年ぶり。角田市のJAXA角田宇宙センターが2段目のエンジンなどの開発に関わる。