「梅毒」の患者が急増、仙台市保健所が検査体制強化へ 24年度は医療機関でも受検可能に

仙台市保健所は2024年度、市内で梅毒の患者が急増する状況を受け、検査体制を強化する。現在の無料・匿名検査に加え、医療機関で好きな時間に受検できる新たな仕組みを整える。東北では秋田県に次ぐ試み。陽性時の早期治療につなげ、感染拡大の傾向に歯止めをかけたい考えだ。

 [梅毒]「梅毒トレポネーマ」と呼ばれる細菌が性交渉によって粘膜を介して感染する。感染の約1カ月後から性器などにしこりができた後、リンパ節の腫れや全身の発疹といった症状が出る。早期の抗菌薬治療で完治できる。治療せずに放置すると、脳や心臓などに合併症を起こす。

20カ所を確保、300~400人の利用見込む

 市は24年度一般会計当初予算案に事業費298万円を計上し、梅毒など性感染症の検査に協力する泌尿器科や婦人科の医療機関を20カ所ほど確保する方針。受検者に1000円の自己負担を求める。24年度は全体で計300~400人の利用を見込む。

 国内では、梅毒が再流行の兆しを見せる。戦後10万人を超えた患者は抗生物質ペニシリンの普及で激減したが、13年ごろから再び増加。国立感染症研究所によると、23年は全国で1万4906人(速報値)の感染が確認された。感染症法に基づき、全数把握となった1999年以降、3年連続で過去最多を更新した。

 厚生労働省結核感染症課の担当者は「患者は性風俗業の従事者や利用者の割合が多い。梅毒が急増している原因として、交流サイト(SNS)を通じた不特定多数との性交渉の増加なども指摘されるが、明確な根拠はない」と話す。

 全国と同様に、市内も増えている。患者数の推移は表の通り。市保健所によると、2023年は126人で、16年(24人)の5倍を超えた。男性は20~50代に分布し、女性は20代に集中する。

 市は月2回、アエル(青葉区)を会場に無料・匿名で検査を受け付けている。他に、平日日中は泉区を除く各区役所、土曜は県結核予防会健康相談所興生館(青葉区)、夜間は青葉区役所でそれぞれ月1回の検査を実施している。

 市は20年4月~23年4月、新型コロナウイルスの対応を優先し、検査の一部を休止。この間も梅毒の感染数が増加したため、医療機関約10カ所で検査を受け付ける試みを23年9月に実施し、約50人が受検した。

 現在の検査体制でカバーできない需要があると判断し、受検機会の拡大に踏み切った。市感染症対策室の鈴木花津室長は「医療機関なら検査の日時を選べる幅が広がる。陽性だった場合は治療にスムーズに移行できる。早期の発見と治療につなげたい」と説明する。

 秋田県は保健所に加え、07年から総合病院4カ所で検査を実施している。

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