宮城県白石市の蔵王山麓にある観光施設「宮城蔵王キツネ村」が訪日客の急増による「オーバーツーリズム」に直面している。来場者は多い日で新型コロナウイルス禍前の3倍となる1500人に上る。スタッフの疲労もあり、4月以降は週1日の定休日を2日に増やすことになった。(白石支局・岩崎泰之)
ごみポイ捨て、強引な撮影…注意しても「日本語分からない」
週末、バスからゆっくり降りてきたのはタイの訪日客34人。ごみを施設内で捨てようとしたり、持ち込み禁止のカメラ関連機材を持ち込もうとしたりして、施設側から注意を受けた。ガイド男性は「日本語分からない」と笑顔で話した。
交通が不便にもかかわらず、訪日客は連日ひっきりなしにやって来る。国別では台湾が多く、バスが10台並ぶ光景も珍しくない。若者が大半で、友人5人で来た中国の男性(26)は「キツネ村はすごく有名。雪の上で寝ているキツネの写真がかわいくて、アプリで拡散している」と説明した。
1年ほど前から急増、1月は計3万人が殺到
コロナ禍前、多い日で500人だった来場者は、1年ほど前から急増。今年1月は計3万人が押し寄せた。繁忙期の2月は以前から無休で営業しているが、平日も600人が訪れる状況は想定外だ。
「疲れたから点滴打ってきた。オーバーツーリズムだ」。キツネ村の佐藤光寛社長(73)は疲労困憊(こんぱい)の様子。外国語に対応できるスタッフはおらず、「言葉が通じないのがとにかくストレス。訪日客はキツネがいても座ったり手を出したりとルールを守らない」とぼやく。
生き物相手だから簡単にスタッフを増やせず…
施設内には放し飼いエリアがあり、抱っこ体験にも行列ができる。土日は15人、平日は10人の従業員で対応するが、多過ぎる来場者に疲労が蓄積しているという。生き物相手の仕事だけに簡単に人を増やせず、手当を引き上げて現場を回している状況だ。
施設は15日、オーバーツーリズム対策で団体客の予約がまだ入っていない4月以降、従来の水曜に加えて木曜も定休日にすると公表した。抱っこ体験も料金を700円から1000円に変更して抑制を図る。
佐藤社長は「団体客は増えるのも早いが、引くのも早い」とみる。木曜定休の措置は3カ月から半年程度を見込み、期間中は施設整備に注力する方針だ。