宮城・三陸地方のワカメ大しけ被害は11億円超 「震災以降で最大の被害」

1月21~22日に発達した低気圧による強風と高波で三陸地方の養殖ワカメが被害を受け、今後への懸念が広がっている。今月始まった収穫は春まで続くが、宮城県によると気仙沼市と南三陸町のワカメの被害額は計11億円を超える見通し。「東日本大震災以降で最大の被害」との声もあり、生産者は支援の必要性を訴える。(気仙沼総局南三陸分室・高橋一樹)

生産者「経済的支援を」の訴え

 南三陸町歌津の港漁港沖で16日午前、ワカメ生産者の及川文博さん(60)らが仲間の養殖ロープを持ち上げると、多くのワカメが抜け落ちていた。残ったワカメもあちこち傷ついているのが確認できた。

 及川さんら生産者によると、今季は三陸沖の海水温が高く岩手産や地元産ワカメの種苗の発芽が遅れ、生育の早い塩釜産の種を例年より多く使った。2月初旬に収穫する予定だったが、目前で被害に遭ったワカメが多かったという。高水温でワカメのロープへの根付きも悪く、大しけのダメージが大きくなった。

 及川さんは「ここまで被害が出るとは想定できなかった」と困惑する。

 気仙沼市と南三陸町は、肉厚でシャキシャキとした歯応えが特長の「三陸わかめ」で知られる国内有数の特産地。大しけでワカメが流されたり傷ついたりし、気仙沼市の一部海域では真水が流れ込んでワカメが白く腐る被害もあった。

 両市町を管轄する県漁協気仙沼総合支所は「地区によって3~7割、全体で半分くらいが被害を受けた」との認識を示す。

 県水産業振興課によると、漁船の破損などを含む県内の被害額は概算で約15億5700万円(16日時点)に上り、ワカメが大半を占める。県産ワカメは今月27日を皮切りに入札会があり、収穫が続く4月末まで実際の被害額は見通せない。

「収入が断たれるのはきつい」

 両市町では約650人がワカメ養殖に従事。震災の津波で被災後、カキ養殖をしていた漁師が新たな設備投資が少ないワカメに転換したり、サケなどの漁獲不振でワカメに軸足を移したりするケースも多かった。

 県漁協わかめ・こんぶ部会の部会長を務める及川さんは「ワカメの収入が断たれるのはきつい。県は長期間の返済猶予がある融資などの支援に加え、宮城が誇るワカメを多くの人に食べてもらえるよう応援してほしい」と語る。

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