「自己肯定感の低い人」に共通するキケンな口ぐせ【心理カウンセラーが解説】

多くの精神疾患をみずから経験し、現在はカウンセラーとして活動している筆者によれば、「自己肯定感」という言葉は、世間に誤解されている。こころが傷を負ったとき、自然治癒させる力が自己肯定感であり、これを高めるためには、日頃の言葉の使い方が重要だという。※本稿は、中島 輝著『口ぐせで人生は決まる こころの免疫力を上げる言葉の習慣』(きずな出版)を一部を抜粋・編集したものです。

「もうダメ」「できない」否定の言葉はこころのブレーキとして働く

 私は、これまで1万5000人を超えるクライアントのカウンセリングを行ってきました。

 そんな中で、自己肯定感が低い人に共通する口ぐせがあることがわかってきました。ここでは、そんな自己肯定感が下がってしまう口ぐせを示しておきたいと思います。

 まず、いちばんわかりやすく、また重大な危険信号は「否定語が増えること」です。

 たとえば、「できない」「もうダメだ」「絶対ムリ」などが否定語の代表格。こうした言葉を多用していたら、要注意です。

 これは自分自身に対して言っていることもありますし、子育て中の人でお子さんに対してよく言ってしまっている人も多いです。もしくは部下に対する指導として、「これじゃあダメだよ」「何回ミスするんだ!」と否定的な言葉を使いがちな人もたくさんいらっしゃいます。テレビの音量が驚くほど下がる

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 なぜ否定語が危険なのか?それは、否定語は「こころのブレーキ」として働くからです。

「もうダメだ」とか「できない」という言葉は、言うなれば、通行止めの看板。自分で通行止めのサインを出し、こころがストップするように仕向けているんですね。

 当然、物事を前に進めることはできなくなるし、道をふさがれた閉塞感、先の見えない不安感で、気持ちがぐんぐん下がっていきます。

 さらに、否定語を頻繁に使っていると、否定的な側面を見る目ばかりが育ってしまいます。あらゆるものを疑うようになり、反射的に否定する言葉を探してしまう。そうなると、拒否したり、排除したり、諦めたりする思考がくせになるのです。

 たとえば、会社で部署異動があったとします。希望していない業務をすることになったあなたは、チームの目標を聞いても「どうせムリだよ」と思い、「がんばって出世しても大変になるだけ」とやる気もない。

 すると、潜在意識は「できない」「意味がない」ことを裏づける情報を集めるようになります。目標を達成できなかったと聞いたり、昇進した同期が忙しく働いているのを見つけては「ほらね、やっぱり」と思って安心する。

 これでは、こころの中に、自分や他人の失敗体験をたくさん積み上げていくことになります。やる気も自己肯定感もますます失われていくでしょう。

 このように、否定語を多用していると、「できるかもしれない」という肯定的側面が見えなくなって、なにかにつけて「どうせムリだ」「難しいよね」とネガティブな側面ばかりが視界に入ってきます。

 視野はどんどん狭まり、閉塞感は増すばかり。となると、もうマイナス思考の底なし沼です。このループに一度ハマるとなかなか抜け出せない。自己肯定感は、下降の一途をたどっていくことになります。

 もう一つ、「接続詞が増えること」もマイナス思考のサインです。とくに注意したいのは、英語でいう「but」の接続詞。なぜなら、「but」の後には否定語が続くことがほとんどだからです。

 たとえば、カウンセリングの中でも、「先生のおっしゃることはよくわかります。でも私は……」と「できない理由」を語る人が大勢います。「でも」「だって」「そうは言っても」。これらの言葉の後には、必ずと言っていいほど否定語が続くものです。60秒で査定依頼/住友不動産販売

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 もしも「でも……」と口ごもって、あとの否定語を声に出していなくても、意味は同じです。

 また、逆説の接続詞で始まる言葉は、言い訳であることが多いもの。言い訳がくせになると、課題から目をそらし、逃げることが自分に根づいていきます。そのうち、壁を乗り越える方法がまったくわからなくなってしまうでしょう。

 自己肯定感は「壁を乗り越える力」です。何度失敗しても諦めないこころ。失敗する自分を受け入れられるこころ。行動できる前向きなこころ。

 言い訳をして逃げてばかりでは、そんな自己肯定感が育つことはありません。ですから、逆説の接続詞が増えること自体が「黄色信号」だと言えるのです。

気弱な話し方も攻撃的な口調もマイナス思考のあらわれ

 3つ目として、言葉の発し方にも注意すべきサインがあります。たとえば、声が小さくなっていたり、ため息まじりの言葉が多くなったり、語尾がモゴモゴ不明瞭になったり。そんな気弱な話し方をする傾向が見られたら、自己肯定感が下がっている兆しだと思ってください。

 これは言わば、「言葉を発すること」にブレーキをかけている状態です。一般的に自動車は、ブレーキとアクセルを同時に踏んでも、ブレーキが勝つように設計されています。つまり、ブレーキを踏んでいる間は、どうがんばっても、前に進むことはありえないのです。

 それと同じで、言葉を発することにブレーキをかけていると、どんなに「いい言葉」を使っても、前に進むことはできません。こころは停滞し、ときには後退することになってしまうでしょう。

 つまり、どんどん気持ちが下がっていくし、ネガティブな思考が生まれていきます。

 じつはこのサインは、こころの不調を抱えるクライアントさんと接していて気づいたことです。そうしたクライアントさんは、カウンセリングに来ても、最初のうちは、なかなか言葉が出てきません。

「えっと……、こんなことがあって……。でも……」

 下を向いて口の中で言葉が籠っているように話されるので、不明瞭で、聞きとりづらいことが多いのです。

 そうした自分の口ぐせ(話しぐせ)を、自分の耳で聞くことによって、さらに気持ちがふさがって、ますます思考が後ろ向きになっていきます。

 4つめの黄色信号は「攻撃的な言いまわし」。これは、ほかならぬ私自身の体験談です。

 私は、25歳からパニック障害などを患い、10年間自宅から出ることができませんでした。その当時を知る人に話を聞くと、いまと比べて私の話し方はかなり違っていたようです。

 異様なまでに早口で、他人の言葉に対して、切り捨てるようなことばかり言っていました。「論理的におかしい」「矛盾しすぎだよ」「それはダサい」「そんなのありえない!」と。こころに刺さったトゲがそのまま言葉に表れているような状態です。そうした物言いは、確実に自分自身を追い詰めていたと思います。

 でも、そんな自分を守るために、さらに言葉のトゲを増やし、他人を遠ざけていくことしかできなかった。そして実際、まわりからはどんどん人が離れていきました。

 これも、自己肯定感が下がっているサインです。

『口ぐせで人生は決まる こころの免疫力を上げる言葉の習慣』 (きずな出版) 中島輝 著

『口ぐせで人生は決まる こころの免疫力を上げる言葉の習慣』 (きずな出版) 中島輝 著© ダイヤモンド・オンライン

 自分を受け入れることができず、物事を多面的に見ることもできないから、視野がグッと狭まって、柔軟性を失った状態。肯定的側面がまったく見えなくなっている状態とも言えます。

 気弱な話し方も要注意ですが、過度に攻撃的な言いまわしを使ってしまっている場合も、自己肯定感の見直しが必要なサインだと覚えていてください。口が悪いのは性格の問題ではなく、過度な自己防衛であり、自己肯定感の欠如かもしれないのです。

 ネガティブな思考は、一度始まると袋小路に入りやすいものです。前進しようとするこころにストップをかけ、自分自身を追い込み、あらゆる意欲を奪ってしまいます。だからこそ、こうしたサインを見逃さず、ループにハマる前に、改善していくことが大切です。

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