函館近海のスルメイカ漁が終了し、2023年度(昨年6月~今年1月)の北海道函館市水産物地方卸売市場での取扱量(冷凍を除く)は前年より231トン少ない317トンで、漁期ごとの統計を取り始めた05年以降で過去最低を記録した。
一方で、1キロ当たりの価格は初めて1000円を上回った。
市農林水産部によると、単月の水揚げが最も多かったのは昨年10月の77トン。前年を上回ったのは12月だけで、漁期を通じて振るわなかった。漁期の取扱量は、過去最低だった20年度の436トンを下回った。
一方、単価は前年より378円上昇し、過去最高値の1344円を記録した。新型コロナウイルスの5類移行で、インバウンド(訪日外国人客)の観光需要が回復したことや、加工業者からの引き合いが堅調だったことが要因とみられる。
大衆魚だったイカが「高級魚」の仲間入りをしたことに、市水産課の佐藤貴洋課長は「市民が気軽に手が出せなくなった」と複雑な心境だ。佐藤課長は「そもそもイカが入ってこないと、漁業者、加工業者の生活が成り立たない。函館の活力にも影響する」と話す。
函館を含む道南で水揚げされるスルメイカの多くは、対馬海峡から日本海を北上して夏に来遊する「秋生まれ群」と、冬に東シナ海で生まれ、太平洋沿岸を北上して釧路沖に至る「冬生まれ群」に大別される。
道立総合研究機構函館水産試験場(函館市)の三原栄次主任主査は、取扱量が過去最低となった要因について「昨年5月に実施した分布密度調査で、今年度のスルメイカ資源量は、秋生まれ群、冬生まれ群いずれも、過去最低水準になっていた」と指摘。また、韓国東岸から北朝鮮、ロシア沿海州の沿岸を回遊するイカを外国船が捕獲していることも一因とみている。
今後の見通しについて、三原主任主査は「こうした傾向は今後も続き、急激な回復は難しいのではないか」と厳しい見方を示した。
大泉潤市長は7日の定例記者会見で「大変な事態になったという認識だ」と語り、漁業者や加工業者への支援を継続していくとした。