日本と台湾の「半導体蜜月」の幕が上がった。世界最大の半導体ファウンドリー(委託生産)会社である台湾TSMCの初めての日本工場である熊本工場の竣工式を契機に日本国内では熊本が日本の「経済安保拠点」になるという分析が出てきた。 【写真】熊本で行われたTSMC工場の竣工式 日本経済新聞は25日、前日に開かれたTSMCの日本工場竣工式のニュースを伝えながら「熊本工場を端緒に日本が台湾や中国に続く成熟品の供給拠点となれば、中国をけん制する形で供給網の安定性を高められる」と意味を付与した。24日に熊本県菊陽町のTSMC第1工場で開かれた竣工式には日本側から斎藤健経済産業相、ソニー復活を牽引した吉田憲一郎会長とトヨタの豊田章男会長ら主要人物が参加した。 ◇TSMCが日本の「ミッシングピース」はめる 当初出席するとされていた岸田文雄首相は石川能登半島地震現場訪問のため出席しなかった。岸田首相はビデオメッセージで「半導体はデジタル化や脱炭素に不可欠だ」と強調した。 この日日本政府はTSMC熊本第2工場支援策も出した。第2工場に日本政府が7300億円に達する補助金を支援すると正式に発表した。第1工場を含めTSMCの全投資金約3兆3800億円のうち日本政府の補助金が約1兆2000億円で3分の1ほどを占めることになる。 斎藤経産相は「生成AI(人工知能)など最先端の技術革新は、先端半導体なしではあり得ない。日本で真のデジタルトランスフォーメーションを実現するため、TSMCは最も重要なパートナーだ」と強調した。その上で「TSMCは日本のミッシングピースである先端ロジック半導体の国内生産を実現するもの」としながら期待感を示した。 ◇日本半導体ルネサンス開始 TSMCも前向きな姿勢を見せた。TSMC創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏も竣工式に出席し、「私の希望であるが、日本の半導体製造のルネサンスの始まりと信じている」と話した。彼は最近会ったAI市場関係者の話に言及し「半導体需要に驚きながらもうれしかった」としながら今後の市場の爆発的成長の可能性を強調した。 この日の竣工式で彼はソニー創業者の盛田昭夫氏(1921~1999)との秘話も紹介した。1968年に米テキサス・インスツルメンツ幹部として初めて日本を訪問した際に盛田昭夫副会長(当時)に会った話だ。彼は「既に伝説的な人物だった。私より10歳年上だったが、親切に接してくれた」と話した。また「文化や人材の点で、日本と台湾は似たところがある」としながら両国のAI半導体同盟の見通しにまで言及した。 日経は張氏の出席に対して意味を付与した。92歳と高齢の創業者の出席で「熊本工場にかけるTSMCの『本気度』をうかがわせた」という話だ。第2工場投資までTSMCの日本進出により1980年代に世界の半導体市場で50%を占めた日本が再び市場の覇権を握れるとの期待感も高まっている。 ◇ナノ頭脳競争本格開始、第2工場年末着工 半導体業界は今回のTSMCの日本工場竣工を契機に技術競争が一層激化すると予想している。実際に10~12月ごろ本格稼動に入る第1工場で量産する半導体は12~28ナノ級半導体。スマートフォンなど各種機器で「頭脳」の役割をする半導体は回路線幅が狭いほど先端となる。第1工場で量産する製品は自動車など多様な機器に幅広く搭載されるが、日本は「経済安全上の戦略物資」を確保することになったと歓迎した。半導体供給不足で主要輸出商品である自動車生産に支障が出たりもした日本としては安定的需給源を確保した格好だ。 ここに年末に着工する第2工場は日本が半導体生産国として復活できるという期待を引き上げている。6~12ナノ級技術を使った半導体が本格生産される予定だからだ。ここで量産する半導体はAI機器に使われる予定で、トヨタはこうした理由から自動運転車市場を狙って2%の出資を決定した。日経は「熊本工場を端緒に日本が台湾や中国に続く成熟品の供給拠点となれば、中国をけん制する形で供給網の安定性を高められる」と予想する。