カップ焼きそばなのに健康的!? 人は「完全メシ」だけで生きていけるか? 管理栄養士の納得の回答は

「体にいいのか・悪いのか」…摂れる栄養素は「1日の1/3」量

お湯を注ぐだけの「カレーメシ」や「日清焼そばU.F.O.」のソース焼きそばのほか、スムージーやグラノーラなどのヘルシーフードもラインナップされている(日清食品「完全メシ」HPより)

コンビニやスーパーで見かけるようになった日清食品の「完全メシ」シリーズ。ラインナップには、カップ焼きそばやカレーメシといったジャンクフードがあるだけに、「体にいいのか・悪いのか」が気になるところだ。 【実食レポート】人気店やご当地麺…あのブランド麺も参戦!「辛いカップ&袋ラーメン10」食べ比べ 「完全メシシリーズを筆頭に、ここ数年で話題になっている『完全栄養食』とは、私たちが1日に必要な栄養素の1/3の量を摂ることができる食品のことをいいます。1日に必要な栄養素は、厚生労働省が発表している『日本人の食事摂取基準』や『栄養素等表示基準値』で決められています」 と話すのは、管理栄養士篠原絵里佳さん。 「完全メシの良い点は、栄養バランスに優れているところ。食事に気を遣っているつもりでも、ビタミンB群やビタミンD、カルシウムなど、食品から摂りづらい栄養素があります。 また、外食が多いと糖質や動物性脂肪、塩分など、気づかないうちに摂りすぎてしまうものが意外とあるんです。完全メシならば、不足している栄養素を補い、なおかつ過剰摂取を防ぐこともできます」 ◆完全メシだけを食べ続けることで、腸内環境悪化の可能性も 注意したいのは“完全”と名前はついているが、摂れるのは1日分の栄養素ではなく、1日の1/3量であるということ。ならば完全メシシリーズの商品を1日で「×3食」食べれば、必要な栄養素は摂れるという計算になるが…。 「3食食べれば数字上は足りることになるのですが、栄養学の視点で考えると、懸念点もあります。 食事から栄養を摂取して生きている私たちにとって、噛んで食べることは非常に重要です。噛むことで唾液が分泌して消化吸収がアップし、むし歯や歯周病の予防にもつながります。満腹中枢を刺激して、食べ過ぎを防止する効果や、表情筋やあごの発達などにも関わっています。 完全メシのラインナップにあるカップメシ、カップ焼きそば、スムージーなどは、咀嚼回数が少なくなるため、噛むことで得られる効果は少なくなるかもしれません」

また、1日に必要な栄養素はバランス良く含まれているが、栄養素以外の「機能性成分」は含まれていない。 「機能性成分とは生命活動に必須ではないものの、細胞の抗酸化や病気の予防、健康の維持に効果的な機能を持った成分のこと。よく知られているのは、トマトのリコピン、ブルーベリーのアントシアンなど。完全メシは加工食品のため、このような機能性成分は十分に摂取できず、生の食品から摂る必要があります」 さらに、こうした加工食品だけに食事が偏った場合、“健康の要”といわれる腸内環境への影響も懸念されるという。 「腸内の善玉菌を増やすには、発酵食品から善玉菌を取り入れたり、食物繊維やオリゴ糖など善玉菌のエサとなる食品が必要です。完全メシだけをずっと食べているとエサとなるものが入ってこないので、善玉菌が増えにくくなると考えられます。良い腸内環境を保つには、いろんな食品を食べることが大切です」 ◆食生活が偏っている人は、むしろ「完全メシ」のほうが健康的 3食のうちの1食と考えると、完全メシの活用方法によっては忙しい現代人の強い味方になる。食生活が偏ったり、1日に2食になったりする人はうまく使うことで、足りない栄養を補うことにつながる。 「完全メシシリーズは、お湯を注いだりレンジで温めたりして完成する商品が多く、どれも調理工程が簡単。外食でラーメン+ライス、コンビニで丼もの+麺類、ファストフードでハンバーガーセットのように、偏った食事が多い人には、むしろ完全メシのほうがおすすめです。 特に夜は食べ過ぎてしまうので、自炊するのが面倒という人は、夜だけ完全メシに置き換えると、その1食は完璧な栄養バランスに。カロリーオーバーも防ぐことができます」 完全メシを取り入れるタイミングとして、夕飯だけでなく朝食にも最適だ。朝食を抜いてしまう人や、時間がなくて菓子パンとコーヒーだけになってしまう人は、完全メシシリーズのスムージー、グラノーラなどを活用すると、手軽にバランスのいい朝食を食べることができる。 1食を完全メシにするとしたら、そのほかの2食を食べる際に注意したいポイントがある。 「残りの2食で、完全メシでは摂取できない機能性成分や、腸内環境を整える食品を積極的に食べましょう。例えば、緑黄色野菜のサラダや果物などの生の食材、ヨーグルトや納豆などの発酵食品、EPA・DHAが豊富な青魚、大豆イソフラボンが含まれた大豆製品など、同じメニューではなく、いろんな食材を食べることを心がけましょう」 ジャンクフードと思っていた食品が、健康志向になってきている。しかも、ひと昔前は「味がうすい」「食べるとイマイチ」ということもあった。技術が進化して味と機能性が両立してきたヘルシーフード。忙しい現代人こそ、使わない手はなさそうだ。 篠原絵里佳(しのはら・えりか) 管理栄養士。日本抗加齢医学会認定指導士。Health&Beautrition主宰。体の中から健康と美をつくる食生活を分かりやすく発信する。総合病院や腎臓・内科クリニックでチーム医療にまい進する中で、睡眠の重要性に気づき、睡眠改善インストラクター、睡眠健康指導士を取得。 取材・文:釼持陽子 編集・ライター。1983年、山形県生まれ。10年間、健康情報誌の編集部で月刊誌・Webメディアの編集に携わったのちフリーランスに。現在はヘルスケア・医療分野などを中心に、医師や専門家の取材、企画、執筆を行う。

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