仙台フォーラスが3月1日から長期休業に入ると、ビル屋上にある和霊神社にも参拝できなくなる。ビル開業2年後の1977年に建てられた神社は仙台藩と縁が深く、商売繁盛の神様として親しまれてきた。関係者はビルの行く末とともに神社の今後も注視する。
神社は愛媛県宇和島市の和霊神社の分社。仙台藩祖伊達政宗の家臣山家(やんべ)清兵衛(1579~1620年)を祭る。清兵衛は政宗の長男で宇和島藩初代藩主となった秀宗に仕え善政を敷いたが、政争に敗れ暗殺されたとされる。和霊神社は清兵衛の霊を慰めるため秀宗と領民の手で創建された。
仙台市中心部の商店街の基礎を築いたと伝わるのが清兵衛の子孫の豊三郎(1832~96年)だ。仙台伊達家に仕えた豊三郎は明治維新後、職を失った氏族のために一番町の自宅敷地に小店舗十数戸を建てて貸し出し、周辺が商業の街となるきっかけをつくった。
こうした由緒を地域振興に生かそうと、一番町一番街商店街振興組合が山家家に相談し、ビル屋上の和霊神社が建てられた。毎年7月の「一番町三社まつり」では振興組合青年会の関係者らが屋上で参拝し、みこしを商店街に担ぎ出す。
商店街のよりどころとも言える神社だが、歴史に詳しい市内のクリエーティブディレクター浜中文夫さん(62)は「市民にあまり知られておらず参拝者も少ない」と残念がる。
一因とみられるのがビル屋上という立地。参拝はビル営業が始まる午前10時から日没までに限られ、1階インフォメーションセンターへの届け出も必要だ。
仙台フォーラスを運営するOPA(千葉市)によると、休業後の和霊神社の扱いは未定。振興組合青年会会長の佐藤宏一さん(47)は「休業を機に、みんなが和霊神社に参拝しやすい形を考えてもらえるとうれしい」と要望する。
屋上で参拝できるのは休業前最終日の29日まで。一番街商店街振興組合は和霊神社を知ってもらおうと3月6~16日、みこしを仙台フォーラス前に展示する。
(報道部・門田一徳)