河北新報は東日本大震災後に生まれた宮城県内の小学6年生を対象に震災の認知度を調査した。82・3%が発生年月日を「2011(平成23)年3月11日」と記述できた一方、正確に回答できなかった児童はおよそ6人に1人に当たる17・7%だった。震災を経験していない世代に基礎情報を問う調査はあまり例がないとみられ、専門家は震災の記憶が十分に浸透していない可能性を指摘する。
(編制センター・中沢昂大、報道部・樋口汰雅、根元優、竹端集)
[調査の方法]内陸部と沿岸部の地域バランスを考慮した上で、宮城県内の公立小学校に依頼した。仙台市は宮城野、若林両区を沿岸部、青葉、太白、泉各区を内陸部に分類した。仙台など13市町教委の協力で昨年12月1日~今年1月19日、オンラインや郵送で調査を実施。21校計770人(内陸434人、沿岸336人)から回答を得た。
河北新報社調査、被災経験の継承重要に
発生年月日を記述式で求めた回答で、誤答のうち「2011年3月」「2011年」「3月11日」といった記述は13・0%あった。残る4・7%の児童は年月日を誤って記した。
正答率を地域別で比較すると、沿岸部が内陸部を4・4ポイント上回った。震災の津波で甚大な被害を受けた沿岸部は、内陸部より震災関連の行事や情報などに接する機会が多いことも一因とみられる。
震災に関する知識も選択形式で尋ねた。発生時刻を「午後2時46分」と回答したのは8割弱で、月日を当てはめた誤答の「午後3時11分」は1割を超えた。
当日の曜日を選ぶ問いは「金曜日」と正答した割合が5割強。沿岸部の正答率が内陸部より10・4ポイント高かった。「土曜日」「日曜日」を選んだ児童は1割に満たず、多くが平日に起きたと認識していたようだ。
原発事故の発生場所に関し「福島第1原発」と答えられた児童は6割にとどまった。対して「福島第2原発」が3割弱、「女川原発」が1割弱いたことから、隣県で起きた重大な原子力災害に対する理解が十分とは言い難い結果となった。
東北大災害科学国際研究所の佐藤翔輔准教授(災害伝承学)は、発生日時の把握について「震災時、自宅で1人で被災して犠牲になった児童もいた。災害の背景情報を知ることが、いざという時にどう対応するべきかを考えることにつながる」と指摘し、震災の経験を伝える活動の重要性を訴える。
この記事は、震災報道や記憶の継承を考える河北新報のプロジェクトの一環として、震災後に入社した若手記者や他の新聞社からの出向者が担当しました。