過去と比べ、業績が振るわない逆風企業で働く人々
物価高が続く今、賃金動向が日本経済の明暗を分けそうだ。ところが直近の発表では、実質賃金は2年連続でマイナスを記録したという。大手企業を中心に広がる賃上げはどこまで波及しているのか? 徹底的な現場目線でその実態を調査した!
第4回は市場がどんどん縮小! 業績が振るわない”逆風企業”。景気のいい話を聞かなくなって久しいあのお仕事の懐事情は?【みんなの給与明細 2024年春闘真っ盛りver. Part4】
*本特集に出てくる年収やボーナスは、額面の金額です。すべて個人の取材によるもので、職種や業界の平均値ではありません
■苦境のモバイル事業の余波を受けているが……
・楽天 営業(男/30代前半)
〈年収〉【額面】580万円
〈冬のボーナス額〉65万円(前年比は転職1年目のため不明)
〈ベアは?〉あり
昨今、何かと話題の楽天モバイルの悪影響が大きい。本来はメーカーや店舗の販促支援と広告営業が自分の業務だが、それ以外に楽天モバイルの法人営業をやらされることがあり、むしろこちらの優先度が高くなりつつある。
一応、日本におけるITバブルの牽引役であるはずだが、業務の自動化はされておらず、手作業中心なのでミスが多発する。
楽天モバイルの苦戦がグループ全体の売り上げにも影響している節があり、今後が不安。そのため転職願望はあるのだが、人が良いのでもう少しここで頑張ってみようと思わせる風土がある。
■新聞社はやっぱりオワコンなのか!?
・大手新聞社 マーケター(男/30代半ば)
〈年収〉【額面】850万円
〈冬のボーナス額〉なし(前年比は転職1年目のため不明)
〈ベアは?〉あり
最近会社が注力しているイベント事業や、学び系コンテンツの契約者を増やすべくマーケティング施策を担当。
しかし、スタートアップからの転職組なので、おじさんばかりの古い企業体質にかなり違和感を覚える。やたらミーティングを対面でやりたがる割に、特に何も決まらないので無意味。
電子版に強みがあるはずだが、それで得た多くの読者データを生かすことができておらず、愕然とした。大手でこれなのだから、日本の新聞業界はいよいよオワコンだという気持ちに。
マーケターは引く手あまたなので、住宅ローンの審査が通ったら転職するつもり。
■コロナ禍の業績悪化でボーナスが激減
・大手レコード会社 企画・宣伝(女/20代後半)
〈年収〉【額面】600万円
〈冬のボーナス額〉なし
〈ベアは?〉なし
音楽のプロモーションを担当。宣伝プランを考えて企画内容によっては営業をしたりすることも。
いまだにキラキラした業界に見られがちだが、伸び盛りの時期を過ぎた業界で、業務内容は地味で泥くさいことも多い。多い月で80時間ほど残業しなければならないこともあるし、事務所との付き合いで会食も多い。休日出勤もざら。ところがコロナ禍で業績が悪化したことから、ボーナスも数年はすずめの涙ほどだった。
仕事への不満はあるが、ほかのどこのレーベルもおそらく同じ環境だろうと思う。実際、他社に転職して戻ってくる人も少なくない。
■華やかな時代はすっかり過去のものに
・フリーランス テレビ番組ディレクター(女/30代後半)
〈年収〉【額面】1000万円
〈冬のボーナス額〉40万円(前年比↑)
〈ベアは?〉なし
制作会社の正社員から、最近フリーランスに転身。
自分がADだった頃は散々こき使われたものだが、今は業界の働き方改革でADの労働時間に規制があり、先に帰らせなければならない。だからといって、番組のオンエアは先延ばしにできないので、結局自分でやることになる。最も割を食っているのが自分の世代だと思う。また、人材を教育する慣習がない業界なので、フリーランスの自分がADを育てなければならないのは理不尽。
入社時はもっと華やかな業界だったが、今は「テレビは終わった」という会話ばかりで気分がめいる。
取材/井澤 梓 奥窪優木 友清 哲 西田哲郎 橋本愛喜 東田俊介 室越龍之介 文/友清 哲 イラスト/服部元信