EVはタイヤ交換地獄? ユーザーリポートから見えてきた単純明快な真実、北米計算では「2か月に1回」の可能性も

EV特有の弱点

 日常的にクルマを使う一般的なユーザーにとって、タイヤ交換の頻度はどれくらいだろうか。もちろん、

【画像】「えっ…!」これがトヨタ自動車の「年収」です(計10枚)

・車種

・タイヤの種類

・年間走行距離

・ドライビングスタイル

などによって、その結果は大きく異なる。それでも、ほとんどのユーザーは、自分のクルマのタイヤがどれくらいの期間もつのかを把握しているだろう。

 量産市販の電気自動車(EV)が登場して10年以上が経過した。EVの普及にともない、すでに何台も乗り継いでいるユーザーも珍しくなくなった。走行距離が10万kmを超えるケースも少なくない。ただ、EV特有の弱点として、

「タイヤの寿命の短さ」

がある。これはどういうことか。

 多くのEVでは、新車時に装着されるタイヤはEV特有の車両仕様や走行特性に合わせて設計されている。多くの場合、タイヤメーカーのラインアップのなかでも、いわゆる「エコタイプ」に属する。つまり、基本的には走行抵抗の少ないモデルである。

 EV特有の車両スペックと走行特性を簡単にまとめてみよう。

 まず、EVはハイブリッド車(HV)や内燃機関車に比べてかなり重い。例えば、ベーシックグレードの日産デイズは840kg、同じく軽自動車の日産サクラは1070kgである。軽自動車で230kgの重量差はかなり大きい。

 HVの日産ノートのベーシックグレードは1230kg、同じくコンパクトEVの日産リーフのベーシックグレードは1520kgである。その差は290kgである。軽自動車やコンパクトカーのレベルでこの違いである。ミドルクラス以上の上級グレードやスポーツタイプ多目的車(SUV)の重量はさらに重い。

タイヤに負担を強いる特性

EV(画像:写真AC)

EV(画像:写真AC)© Merkmal 提供

 車重の差はタイヤへの負担に直結する。標準装着タイヤの場合、設計段階で車重の増加に対して十分な対策が採られていると考えるべきだが、それでも限界はある。EVには車重以外にもタイヤに大きな負担を強いる特性がある。それは

・優れた加速性能

・回生ブレーキ

である。

 これについては、EVは静粛性が高いため、多くのドライバーは自分ではそう意識していなくても急加速してしまう傾向がある。その結果、減速時に回生ブレーキを多用することになり、内燃機関車での急加速/急減速に相当する操作を行っている。

 また、車重が重く駆動力が大きいため、コーナリング時にタイヤにかかる負荷も大きくなる。内燃機関車の場合、ハイパワーFF車では駆動輪タイヤの偏摩耗が見られる。加速時や減速時にタイヤにかかる横方向の力が増大することは、非常に大きな負担となる。EVの場合、ハイパワーをうたっていなくても、同じ理由でタイヤの偏摩耗が起こる。

 EVがタイヤに大きな負担をかけていることはわかった。では、実際にどの程度の負担なのか、タイヤは何km持つのかを検証してみよう。

 この件に関しては、インターネット上のブログにユーザーからのリポートが多数掲載されている。極端な例だが、北米ではEVが1万マイル(約1万6000km)も持たないケースもあるという。市販されているEVのほとんどがSUVであることを考えると、これはかなり厳しい数字である。

 北米では年間走行距離が5万マイル(約8万km)に達することも珍しくなく、最悪の場合、こうしたユーザーがEVを購入した場合、

「2か月に一度」

はタイヤを交換しなければならない。

使用限界の見極

EV(画像:写真AC)

EV(画像:写真AC)© Merkmal 提供

 では、日本ではどうか。何人かのユーザーのリポートによると、新車のタイヤの寿命は一般的に3万kmだったという。これはよいことではないが、特に悪いことでもない。

 興味深かったのは、「もっと快適なタイヤが欲しい」ということで、標準装着品とは違うタイヤに交換したところ、タイヤの減りや偏摩耗が目立ち始めたという報告だ。この場合でも、タイヤが寿命を迎えるまでに約2万5000km走ることができたが、それでも標準装着品に比べて走行可能距離が

「約20%減少」

したという。タイヤを使う上で難しいのは、

「使用限界の見極め」

である。例えば、摩耗限界に達したことを示すスリップサインは、「この状態では車検は通りません」を意味しているにすぎない。それ以前にタイヤの性能が限界に達していると考えたほうがいい。偏摩耗が見られる場合はなおさらだ。

 このようにさまざまなケースを総合的に判断した結果、EVに装着するタイヤはどのように選べばいいのだろうか。結論は、標準装着品か、EV専用設計のタイヤである。現在、EV専用やEV・HV・PHV専用タイヤとしては、

・ブリヂストン「エコピアEV-01」

・ミシュラン「パイロットスポーツEV」

・同「Eプライマシー」

などがある。

価格と性能の微妙なバランス

EVのタイヤ(画像:写真AC)

EVのタイヤ(画像:写真AC)© Merkmal 提供

 気になるその価格だが、インターネットで調べた最安値は軽自動車用のエコピアEV-01サイズで1本1万円強。コンパクトカー以上では1本2万円前後となる。

 スポーツEV用で最小サイズが19inのミシュラン・パイロットスポーツEVの場合、最も安いタイヤでも1本4万円前後からと非常に高価だ。

 他にもEV専用タイヤはあるが、入手性の面で選択肢は多くない。場合によっては、無理せず純正装着品を選択することもアリだろう。

 EVが普及しなければ、タイヤの寿命問題がここまでクローズアップされることはなかっただろう。今後もEVに関するユーザーサイドからの報告を注視していきたい。

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