加美農高(宮城県色麻町)の生徒たちが、人工知能(AI)で判別されたイノシシだけを捕まえる箱わなを考案し、製作した。地元猟友会を悩ますクマやシカなど別の動物がかかる「錯誤捕獲」を解決しようと研究を重ねた。1月にあった最新技術を活用した農業ビジネスプランを競う全国大会では最優秀賞に輝いた。
農業課題解決したい
農業機械科3年の今井草太さん(18)、川熊叶翼(きょうすけ)さん(18)、鎌田和希さん(18)の3人が授業の一環で取り組んだ。わなは高さ、幅各90センチ、奥行き180センチ。内側に顔認証できるAIカメラを取り付けた。
猟友会の協力をもらい複数の角度から撮ったイノシシや仙台市太白区の市八木山動物公園から提供されたクマやキツネなど計約2000枚の写真を活用し、イノシシだけを選別する独自のAIを開発した。
箱わなに動物が入るとAIが対象かどうかを認識し、イノシシの場合だけ柵が自動で閉まる。設置者のパソコンやスマートフォンに捕獲の通知が送られる。
農業機械科は2020年度から色麻町や地元の猟友会と連携し、イノシシによる農作物被害の対策などを議論してきた。駆除に当たるハンターからは、箱わなの改善を求める声が多く寄せられた。
従来は、入り口の柵とワイヤでつながる踏み板を触ると柵が閉じるため、イノシシ以外の動物が入ることも少なくなかった。数日おきの見回りが必要で、別の獲物が食べた餌を交換するなど、わなを仕掛け直す作業にも時間がかかった。
話し合いに参加した生徒たちがAIの導入を提案。今井さんら3人が引き継ぎ、実用化の道筋をつけた。試算では従来の2倍の月6頭の捕獲が可能で、見回りから駆除までの時間は3分の1程度に短縮される。
1月21日に兵庫県姫路市であった「アグリテック甲子園」では1次審査を通過した高校や大学計7校で競い、加美農高は最も高い評価の最優秀賞を獲得した。
3人は2月15日に県庁を訪れ、佐藤靖彦教育長に受賞を報告。「一緒に研究した猟友会の悩みを解決したかった。開発した技術を県内だけでなく全国に広めたい」と口をそろえた。