“時価総額世界3位” 米半導体大手エヌビディア日本法人代表に緊急取材「ウチの会社は結構特殊なことを…」「創業者とは一緒にラーメンの行列に」

 時価総額が2兆ドル(約300兆円)を突破し、日本株上昇の原動力とされる米半導体大手のエヌビディア。同社日本法人の大崎真孝代表が「 週刊文春 」の直撃取材に応じ、AIの今後や社内の雰囲気、創業者の素顔などについて語った。 【画像】「革ジャンがトレードマーク」創業者のジェンスン・フアン氏を見る

エヌビディアの好決算で半導体銘柄が

最新技術が搭載されたエヌビディアの製品 ©時事通信社

 経済部記者が解説する。 「エヌビディアは、単価が高いAI向け半導体の“絶対王者”です。2月21日発表の今年1月期通期決算によれば、売上高約609億ドル(約9兆円)。時価総額はアマゾンを抜き去り、世界3位に浮上しました。マイクロソフトやテスラなど名立たる企業がお得意さま。同社の好決算を受け、AIブームが当面続くと見た投資家が国内半導体銘柄を買いに走った結果、日経平均も押し上げられました」  エヌビディアの創業者は台湾系アメリカ人のジェンスン・フアン氏(61)。スタンフォード大学で電気工学の修士号を取得後、1993年に同社を設立した。黒の革ジャン姿がトレードマークで、九州じゃんがらラーメンが大好きとの情報もある。

「日本やドイツはアナログの技術から…」

 日本ではこれまで馴染みが薄かったエヌビディアとはどんな会社なのか。同社日本法人の大崎代表を直撃した。大崎氏は大学卒業後、1991年に半導体企業の日本テキサス・インスツルメンツ株式会社に入社。20年以上、営業や技術サポート、ビジネス開発などに従事してきた。2014年、エヌビディアに入社。現在は日本法人の代表として、同社製品の市場拡大やAIコンピューティングの普及などに尽力している。  以下は、大崎氏との一問一答だ。

――「週刊文春」です。半導体が牽引して日本の株価も上がっている現状について、どのように認識していますか? 「こんな形で取材が来るとは考えてもいなかった(笑)。ちょっと待って下さい……、そうですね、最初はデータセンターから始まって、クラウドベンダー(クラウドサービスを提供する事業者)、例えば米国だったらGAFAのクラウドベンダーが来て、そこから始まった。これまでのモノづくりというよりデジタルの技術から来て、AIが立ち上がってきたんです。けれど、日本やヨーロッパ、例えばドイツとかはこれまでのモノづくりがあるので、アナログの技術から立ち上がってきているじゃないですか? でもタイミングは今ようやく来ている。政府や企業のインフラ投資が始まっていて、これからのチャレンジは、これまでの技術にいかにAIを入れていくか、です。それが、日本の強みになってくるんじゃないかなと」 ――今回もかなりの増収増益でしたが、これからAIの搭載が進むとなると、まだまだ伸びしろはある? 「そうですね。AIって学習をしてトレーニングをしてサーバーがビッグデータを作って、それらをマシーンや、車、ロボット、医療機器に入れていくんですね。それで製品やサービスになるんですけど、今はその学習環境への投資がされている段階。それらが製品に乗っていくから、もっともっと広がっていくと思います」

「まだまだ途上だと思ってますし、楽観視もしていません」

――これだけ株価が上がりましたが、社内に高揚感は? 「いや、全然ないですよ。僕もエヌビディアで11年目ですけど、全然そういう浮かれたことはないし、地道にやっています。まだまだ途上だと思ってますし、楽観視もしていませんから。今の日本市場のモメンタムがスローダウンしないことが一番大事かなと」

――今ライバルとして意識している相手はいますか? 「ウチの会社って結構特殊なことをやっているんです。半導体メーカーと言いながらも、AIのシステムやソリューションを開発して提供して、それでエコシステムを作り上げるというのはなかなか他のメーカーでやっていないことなんですね。だから直接的なコンペ(競争相手)というのは、あまり意識していませんね」 ――急なキャッチアップはあり得ない? 「そう。僕たちが社内で話をしているのは、自分たち自身がいかに先頭に立って、市場を作れるか。パートナーや開発者の方をどう導くか、に主眼を置いています。何か製品対製品、サービス対サービスで比較するというのは、あまりないですね」

求人サイトに出ていた社員の年収とは

――求人サイトには、年収1000万、2000万と。 「まぁ人によります、職種によりますね」 ――年収4900万円もあるとのニュースも見たのですが。 「えー!」 ――アメリカでしょうか? 日本法人ではない? 「ないんじゃないですかね(笑)。でもエヌビディアだけじゃなくて、AI人材はやっぱりそのクラスが普通だと思います」 ――優秀な方が集まっているというイメージがありますが、転職組が多い? 「そうですね、日本では新卒はまだとってなくて転職組がメインですよ。もちろんIT系がメインで、サーバーのメーカーから来た人もいれば、純粋なメーカーから来た人、研究者の方もいらっしゃいます。日々海外とやり取りする必要があるので英語は必須ですね」

「ジェンスンが来たら一緒に行列に並んで」

――フアン代表は頻繁に来日している? 「来てますよ、年に1~2回ですかね。親しみやすい人柄ですが、もちろん創業者で経営者なので、ビジネスには厳しいですけどね」 ――何やら赤坂のじゃんがらラーメンに出没すると聞いていますが。 「じゃんがらラーメンは最近は行っていないです(笑)。ラーメン屋にはいつも行きますが。ジェンスンが来たら一緒に行列に並んでご飯食べてますよ」 ――大崎さんとご一緒に? 「そうです、そうです。僕もそうですし、社員もそうだし」 ――普通の社員とも一緒に? 「行きますよ、もちろん!」 ――フアン代表はよく会見で革ジャンを着ていますが、日本に来る時も同じような服装で? 「そうですね。革ジャンでない時もあるけど、あれが彼のトレードマークなんで。他の服も着てますけど(笑)」

「AIでまさかここまで伸びるとは」

――なぜエヌビディアに転職を? 当時から成長性を見込んでいたんですか? 「いやいや、全然考えてなくて。本当はTI(日本テキサス・インスツルメンツ)にずっと居てもよかったんですけどね、60まで。すごく良い会社なんでね。でもヘッドハンティングされて、ジェンスン・フアンと会って、全てのモノから学ぼうという姿勢がものすごく強くて。それで彼の魅力に引き込まれて入社しました。AIでまさかここまで伸びるとは、当時は私も正直思っていませんでしたけど(笑)」  3月6日(水)12時配信の「 週刊文春 電子版 」および3月7日(木)発売の「週刊文春」では、サントリーホールディングス・新浪剛史社長ら日本を代表する有名社長4人への緊急取材をはじめ、「“伝説の編集長”が解説『四季報で分かる大化け株』」、「“長期投資の神様”が教える『新NISAに手を出すな』」、「創業者はラーメン大好き 最強エヌビディアの謎を追う!」など、11ページにわたって株価4万円を突破した日本経済の大特集を掲載している。

「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年3月14日号

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