「ひとり言」をつぶやく人ほど自己肯定感が高い訳 驚きの「脳と言葉の活性効果」を専門医が解説

言葉には、不思議な力があります。「自分は○○だ」、「自分〇〇できる」といった自己規定の言葉を発したとたんに、不思議に自分自身がその方向に向かっていくようになります。

なんだか地味で、暗い感じがするかもしれない「ひとり言」ですが、実はさまざまな効用があり、奥が深いものだといえます。

では、何をどのようにつぶやくと、効果が出るのか? 脳内科医の加藤俊徳氏の新刊『なぜうまくいく人は「ひとり言」が多いのか?』をもとに、脳と言葉のメカニズムを脳科学的な視点から解き明かし、上手にひとり言と向き合うことで、自分の能力を高める方法を3回に渡り解説します。

ひとり言には意味がある

私たちの何気ない「つぶやき」は、決して非生産的なものでも、マイナスのものでもありません。そこには必ず、ある種の重要な意味やメッセージがあります。

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「ひとり言」がいかに私たちに影響を与え、さまざまな効果を生んでいるかを、より具体的に明らかにしておきたいと思います。

ふだん私たちは、家庭や職場などの環境や人間関係の中で、さまざまな状況にさらされます。その中で多くの刺激を受け、情報をインプットし、それに対する反応やアウトプットを行います。

計画を立てたり、企画を考えたり、研究したり、文章を書いたりするような、創造的な作業に没頭することもあるでしょう。メインフレームからクラウドへ。私たちは、大手銀行の基幹システム移行を支援。

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その際、脳は刺激を受け、さまざまに活動します。その結果、私たちの脳の中には各種さまざまな言葉や情報、イメージが生まれます。意識に昇ってくるものもあれば、無意識の中でうごめいているものもあるでしょう。

ひとり言は、そういう混とんとしたカオスのようなものを整理し、自分の中で価値づけし、意味のあるものに変換する、「思考の動き」そのものだと考えます。

たんなる“うわごと”ではない

これを「右脳」と「左脳」の働きで説明すると、脳の中には右脳が司るイメージやインスピレーションといった「非言語的」な情報と、左脳が司る「言語的」な情報があります。

それらをひっくるめて、左脳の思考作用によって情報を整理・選択し、結び付けたり変換したりしてアウトプットにつなげる、ということになります。

ちなみに、思考作業は基本的には「言語」によって行われます。論理的な思考を行う際、私たちの左脳を中心にして、脳内には言語が飛び交っている状態になるわけです。そのときの思考が、口をついて言葉になって漏れ出してきたものが、ひとり言だと考えていいでしょう。

どうでしょうか? 「ひとり言」はたんなるうわごとではないことがわかっていただけると思います。それは脳の思考の働きそのものであり、創造的で生産的な脳の働きが、言葉になって飛び出してきたものなのです。

ですから、ひとり言には「意味」と「価値」があるのです。ひとり言に注意を向けることで、自分自身の思考の動きを知るヒントになるのです。

■ひとり言で気持ちを上げる

また、ひとり言には自分の気持ちを鼓舞して、やる気を出させる力があります。「頑張るぞー!」、「絶対できる!」。言葉にして出すことで、一種の自己暗示にかけるわけです。

そういえば、私の父親は生前、仕事に出かける前に「よし、今日もやるぞ!」とつぶやいていました。朝早いので誰も聞いていないし、誰も返事もしないのですが、毎朝のように繰り返していました。

今から思えば、それが父親の朝の儀式であり、脳と身体が動き出しやすくなるフレーズだったのでしょう。そういう自分の気持ちが上がる言葉を探してみるのもいいかもしれません。【漫画】社内のエースが突然の退職...地方中小企業の社長の「大逆転劇」とは?

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ある女性は毎朝出かける前に鏡を見て、「なんてきれいなんでしょう!」と自画自賛のひとり言をつぶやいて、上機嫌で仕事に出かけるそうです。

傍から見ていると、なんだか可笑しくなりますが、ある意味、最高のひとり言だと思いませんか? 

誰も傷つけず、迷惑をかけず、自分の気持ちを一番高揚させる言葉の典型です。

自己肯定感を保つことができる

ちなみに私の場合は、何か研究で重要な事実をつかんだと思われるとき、「これは、大発見だ!」と自分を鼓舞する言葉を意識して口にします。すると脳が一気に活性化して、研究に対するモチベーションが高まるのです。

若い頃、アメリカで研究をしているときも、それこそ世界中から自他ともに秀才と認める研究者が次々現れました。私は自信を失いつつも、なぜかひとり言で「(こんな状況だけれど)もしかして、俺の方ができるんじゃない?」とつぶやくことがありました。

今にしてみると、とくに根拠はなかったのですが、口走ることで不思議と自信と自己肯定感が保たれたと思います。そして実際に、脳活動の計測理論とその方程式を確立することができました。

意識的に自分を鼓舞し、気分を高揚させる言葉を使うことによって、自己肯定感を高め、前向きな生き方ができるようになるのです。

■目的意識が強くなる

言葉には、不思議な力があります。古来から、人はこの力を「言霊」と表現しました。言霊には人を動かす霊的な力が宿っています。脳科学者という立場ながら、私自身もそのような言葉の力を認めています。

「自分は必ずできる」、「自分は絶対に曲がったことはしないぞ」。

言葉には言霊がありますから、「自分は○○だ」、「自分〇〇できる」といった自己規定の言葉を発したとたんに、不思議に自分自身がその方向に向かっていくようになります。

決意を込めたひとり言の効果

このことは、「目的」や「目標」を設定する際にも力を発揮します。

「必ず合格してみせる!」、「今年こそは、絶対いいパートナーを見つけよう!」。

こうした決意を込めたひとり言は、自分の意識を大きく変えます。目的意識が強くなり、自然と行動がその目的や目標に向かうようになるのです。

私たちの脳は思考や記憶、感情や運動など、それぞれの得意分野に分かれています。

なぜそういう区分けができたかというと、そもそも思考や記憶をするため、感情を働かせるというように、目的に対応するために脳が形作られてきたという経緯があります。

つまり、脳自体が最初から目的達成のために作られた器官なのです。

ですから、脳自体が生産的な活動を行うには、「目的」というものが不可欠なのです。

逆に言えば、目的があれば、脳は1つにまとまって、一気にそれに向かって動き出すわけです。そのきっかけが「ひとり言」であり、言霊を持った言葉そのものだということです。

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