夜になると人の血を吸って、かゆみを引き起こすトコジラミが世界的に広がり、国内でも被害が相次いでいます。人の往来が増える中、必要な対策を取材しました。
強い繁殖力で刺されると痒みや発疹
人を刺して血を吸う虫「トコジラミ」。「ナンキンムシ」とも呼ばれるカメムシの仲間で体長は5ミリ程度、主に夜間に人や動物の血を吸い、刺されると痒みや発疹を伴います。
兵庫医科大学・夏秋優教授:
「初めて刺されたときは実はなんの症状も出ない。トコジラミが我々から吸血するときに唾液腺物質というものを注入してくる。何度か注入されることによって、我々の体がアレルギー反応を起こすようになって、その結果、かゆみや赤み、ぶつぶつが出てくる」
虫による皮膚病に詳しい夏秋優教授によりますと、コロナ禍前に世界中で広がり始めていたトコジラミは、人の流れが戻った去年から再び急増しているということです。非常に強い繁殖力を持ち、知らない間に荷物や衣類につくため、宿泊施設を中心に問題となっています。
夏秋優教授:
「刺された場合は市販の虫刺され用の塗り薬などを塗っていただければ、大体1〜2週間くらいで治まります。炎症が強く、かゆみ、赤みがひどい方でも皮膚科の先生に治療してください。刺されたことに対する治療としては、それほど大変なことにならないので、心配いりません」
インバウンド増加に伴い相談も急増
害虫駆除を専門にする大分県玖珠町の会社ではトコジラミの相談が去年から急増。1か月に20件の駆除依頼があるといいます。
コクエイ消毒・長野雄樹代表:
「一番多いのはホテルや旅館で、コロナ明けからインバウンドのお客さんが海外からやってきて、それに伴い、問い合わせが増えてきている」
厚生労働省によりますと、トコジラミを持ち帰らないため、宿泊施設では入室後にベッド周辺やソファ、クローゼットなどをチェック。怪しければ、別の階の部屋の交換を要求するほか、旅行バッグはバゲージラックの上や浴室へ、脱いだ衣類はビニール袋などで保管するよう呼びかけています。また、消灯後、いったん照明をつけて、徘徊している虫がいないことを確認してほしいとしています。
長野雄樹代表:
「ダニの駆除は表面的に薬をまくが、トコジラミは隙間に薬を入れるので、薬剤も使う上に探すのも結構大変です。薬剤に抵抗性がついているスーパートコジラミもいるので、極力自分で持って帰らない対策が一番」
一方、2月にリニューアルオープンした別府市のホテルアーサーでは、トコジラミの被害は出ていませんが、警戒を強めています。
ホテルアーサー・日名子健太郎代表:
「デュベカバーというのをかけていて、直前に使った人の布団がお客様に直接触れることはほぼない」
また、従業員が布団や枕のカバーを取り換えて掃除機をかけるなど基本の清掃を入念に行い、今できる対策に注力しています。
日名子健太郎代表:
「トコジラミが出ると怖いからホテルを利用するのはやめておこうとなる。実は部屋だけの問題だったのに、ホテル全体のことにもなりかねない。宿泊施設として情報発信はしっかりしていかなければならない」
トコジラミはベッドマットの端や木枠など狭い場所に生息。1日に卵を数個うみます。厚労省はトコジラミを発見した場合、専門業者に相談してほしいとしています。コロナ禍前のような人の行き来が戻る中、“トコジラミを持ち込まない”ということが最も大切です。