集団移転跡地活用に格差 にぎわう仙台、将来像も課題 「元住民と事業者で議論を」・東日本大震災13年

 11日で東日本大震災から13年。  住民が内陸部などに移り住む「防災集団移転促進事業」が実施された被災地の沿岸部では、移転跡地の利活用率に地域格差が生まれている。また、跡地の将来像について、元住民からは懸念の声も上がる。都市計画の専門家は「需要に合った土地活用を行うため、元住民と事業者らが議論する場を設けることが重要だ」と指摘する。 【写真特集】東日本大震災 100枚の記録  復興庁によると、被災3県の自治体が買い取った移転跡地のうち活用が見込まれる土地の割合は、2022年末時点で岩手が61.0%、宮城が76.3%、福島が74.7%。人口が多く、交通インフラに恵まれた仙台市を中心に土地活用が盛んな一方で、リアス式海岸の複雑な地形や放射能汚染などの影響から一部自治体などは20~50%程度にとどまる。  厳しい現状について、宮城県気仙沼市の担当者は「震災前の土地の利用状況がどうだったのかも考慮する必要がある」と話し、岩手県大槌町の担当者は「未利用地が多い地区は近くに河川があり、水害の危険から活用が難しい」と明かす。同町の沿岸部から移転した女性(88)は「元の土地に住み続けたかった。活用されれば諦めもつくが、更地のままでは惨めな気持ちになる」と語る。  一方、仙台市では23年末に移転跡地の活用地区全てで事業候補者が決定。元住民や事業者らを対象に、被災した沿岸部の将来像についてアンケートしたところ、「震災記憶の継承・発信」を重視する声が最も多かった。地域には伝承施設が既にあるが、今回選定された事業者が同様の施設を新設する計画もあり、さらなる地域活性化に期待は高まる。  ただ、仙台市でも移転跡地を巡り、不安の声はある。津波被害を受け、同市宮城野区の内陸部に移転した下山正夫さん(79)は「観光施設でにぎわい創出はできるが、伝承につなげるのは難しいのではないか」と話す。同様に移転した同市若林区の末永稔さん(68)は、新たな災害が発生した際、「観光客の避難は大丈夫なのか」と心配する。  都市計画に詳しい東北大の姥浦道生教授は「(跡地の)利活用という新しい未来と被災地域の過去の記憶。重視するものは人それぞれ違う」と指摘。「地元と事業者が協力し、伝承に加え、経済的な効果や環境保全などについて総合的に考えることが大切だ」と話している。 

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