東日本大震災の経験や教訓を今後の防災に役立てる仙台市主催の「仙台防災未来フォーラム2024」が9日、青葉区の仙台国際センター展示棟などであった。能登半島地震の発生から2カ月余り。大学、企業、NPOなど延べ139団体が「今できる防災」をテーマに事例発表やブース展示を繰り広げた。
東北大災害科学国際研究所が企画したシンポジウムは、金沢大の青木賢人准教授(地理学)がオンラインで火災や津波、液状化など多様な被害を受けた能登半島地震の状況を報告した。
「被災地の集落は生活と生業が近く、地縁血縁も強い。漁港の集約化などを視野に入れた『創造的復興』をどう進めればいいのか、震災を経験した東北の知恵を借りたい」と訴えた。
災害研の姥浦道生教授(都市計画)は「人口減少への対応と、まちの魅力の最大化が復興計画の論点になる」と説明。「生活再建はすぐに取りかかりたいが、計画づくりは1年がかりになる。スピード感の違いをどう合わせるかがポイントになる」と指摘した。
北上市の医療・産業用ガス製造販売「北良」は水道が復旧していない避難所や病院を中心に、排水を浄化して繰り返し使える循環型の手洗い器200台とシャワー100台を設置した。
講演した笠井健社長(49)は「手洗いができないと感染症のリスクが高まり、関連死を招きかねない。シャワーは精神面に及ぼす効果が非常に大きい」と意義を強調。「次の災害でもたくさんの人が助かる環境を整えたい」と話した。
フォーラムは2016年から毎年開催。約4100人が来場した。
宮城の中学生15人「かほく防災記者」が活動報告
河北新報社は9日、仙台市青葉区の仙台国際センターなどで開かれた仙台防災未来フォーラムにブースを設け、かほく防災記者第3期研修に参加した宮城県内の中学生15人の活動を発表した。研修生が編集した「マイ防災新聞」を展示したほか、研修生が監修した「マイ防災ミニブック」を作るワークショップも行った。
研修生は昨年10~12月、家族と一緒に避難訓練に取り組み、課題や成果について記事を執筆。昨年12月の研修で見出しを考えて、タブロイド判の新聞を完成させた。展示した紙面には「足元注意 街中に潜むワナ」「避難のタイミング適切に」といった見出しが並んだ。
郡和子仙台市長もブースを訪れ、新聞に目を通した。仙台青陵中等教育学校1年桜井みらいさん(13)は「夜間に訓練を行った。道がでこぼこで危険を感じた」と説明。郡市長は「高齢者もたくさんいる。大事な視点だ」と述べた。
ミニブックは全8ページで、河北新報に掲載した研修生の記事のイラストや、連載「防災士記者 備えのコンパス」から選んだ6枚のイラストなどで構成。来場者は、研修生に作り方の手ほどきを受けながら、ミニブックを作成し、持ち帰った。
仙台・世界防災フォーラム来年3月の開催を発表
一般財団法人世界防災フォーラム(仙台市)は2025年3月7~9日、東日本大震災の被災地から国内外に防災を発信する国際会議「第4回世界防災フォーラム」を仙台市青葉区の仙台国際センターなどで開く。センターで9日に開かれた仙台防災未来フォーラムで、代表理事を務める小野裕一東北大災害科学国際研究所副所長が発表した。
キャッチフレーズは「どうするキコヘン?」。気候変動による災害リスクを減らすために、どのように行動を変えていくべきか。産官学民の多様な当事者がセッションやポスター発表、ブース展示などを通じ、課題解決に向けた情報を発信する。
主催は仙台市、宮城県、東北大、河北新報社などで構成する国内実行委と国際実行委員会。国内委の委員長は東北大災害研の栗山進一所長が務める。
最終日に3日間の成果を取りまとめた提言を発表する予定。小野代表理事は「具体的な解決策を話し合って共有する場にしたい。展示や市民向けセッションは、市民が無料で参加できる」と述べた。
第3回フォーラムは23年3月10~12日に仙台市で開催され、40カ国の1335人が参加した。