トヨタ東日本が宮城・南三陸でデマンド交通参画 AI活用し配車サービス、人口減や高齢化進む被災地の生活支える

東日本大震災で被災した宮城県南三陸町で、トヨタ自動車東日本(宮城県大衡村)が復興支援として参画するデマンド交通の実証実験が進んでいる。トヨタのシステムを取り入れ、人工知能(AI)を活用した配車サービスを展開し、町民の好評を得ている。人口減少や高齢化に直面する被災地で、同社は持続可能な公共交通の実現を目指す。(報道部・三浦光晴)

 ワゴン車を使った乗り合いバス事業「Smart GOTO(スマート・ゴートゥー)南三陸」は昨年7月、南三陸町の入谷地区で始まり、11月には歌津地区にエリアを拡大した。

 会員登録後、スマートフォンや主要施設にある専用端末で予約サイトにアクセスし、出発地や目的地、出発時刻などを入力して予約すると、希望した時間と場所に乗り合いバスが来る。

 支えているのはトヨタのシステム「Smart GOTO」。予約内容を踏まえてAIが最適ルートを計算し、効率的な運行につなげる。長崎県新上五島町で2021年から運用され、利用者を伸ばしている。

 2月末、南三陸町中心部の志津川地区のスーパーに、山手の入谷地区に住む阿佐野たき子さん(65)が、乗り合いバスに乗って買い物に訪れた。運行ダイヤを気にせずに買い物できるのが利点。「出かける機会が増えた」と喜んだ。

 買い物を終え、店内の専用端末で次の予約を入れた阿佐野さん。「空いた時間に友達と会ったりしやすくなった」と笑顔を見せた。

 震災後、町の公共交通はJR気仙沼線BRT(バス高速輸送システム)と町民バスが担った。高台への集団移転が進み、高齢化や人口減が相まって、町民バスではニーズに対応できなくなっている。

 デマンド交通の実証実験は、町とトヨタ東日本などでつくる協議会が運営する。2月末時点の会員数は約450人。利用者は1日おおむね20~30人で、50人を超える日もあるという。

 3月からは予約サイトで「まちニュース」の発信も始めた。町内の催事や病院の休診、防災関連など身近な情報を伝える。車内にも端末を備えており、協議会会長で歌津交通(南三陸町)の及川直和社長は「乗り合いバスにとどまらない活用ができる」と期待する。

 トヨタ東日本は20年に東北モビリティ・プロジェクトを発足させ、県と公共交通などの課題解決に乗り出した。22年には南三陸町、気仙沼市、女川町と「東北モビリティ・コンソーシアム」を設立。気仙沼市ではデマンド交通、女川町では先進的モビリティーの活用検討に取り組んでいる。

「Smart GOTO南三陸」の運行時間は入谷地区が午前7時半~午後5時半、歌津地区が午前8時半~午後3時。年末年始を除き、平日のみ運行する。運賃は1回8キロ未満400円、8キロ以上500円、1日乗車券1000円。

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