「預金がお宝に」 脱マイナス金利にらみ、大手銀行が獲得へ転換

 「預金を集めよ」。大手銀行がこんな号令のもと、久方ぶりの預金獲得競争に動き出した。日銀がマイナス金利政策を解除する可能性が高まり、低金利で凍り付いていた国内のマネーが動き出すと見込んでいるからだ。銀行にとってお荷物だった預金が「金利のある世界」の復活で「お宝」に変貌しようとしている。

 預金が重荷だったのは、日銀の超低金利政策の影響で、銀行が預金を原資に企業や個人に融資しても利ざやを取りづらい上、支店や現金自動受払機(ATM)の運営コストがかかるからだ。特に日銀が2016年に開始したマイナス金利政策以降、過剰な預金がある銀行は日銀への支払いが生じることになり、その重みが一段と増した。8000本の研修動画が定額受け放題

Schoo8000本の研修動画が定額受け放題

PR

 預金を増やしたくない大半の銀行は普通預金の金利を過去最低の0・001%に設定。100万円を預けても利息は年10円に過ぎない。それでも多くの消費者が普通預金に資金を置きっぱなしにすることが常態化した。

 ところが、人生100年時代が現実のものとなり、資産運用ニーズが高まると状況は一変した。預金を起点に資産運用サービスを展開する事業機会が生まれ、楽天や携帯電話会社、PayPay(ペイペイ)などのスマートフォン決済サービス会社が続々と新規参入。最近の株高と「金利のある世界」の到来で、この流れが加速するとみた大手銀行がようやく重い腰を上げたのだ。

 最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は昨年11月、傘下の三菱UFJ銀行が期間10年の定期預金金利を従来の0・002%から0・2%に引き上げたのに続き、銀行口座や資産運用、クレジットカード、信託などグループ内のサービスを連携するスマートフォンアプリの開発に乗り出す。使い勝手の向上に加え、ポイント制度も見直し新たな顧客を引きつけるのが目的だ。MUFGの亀沢宏規社長は「預金量は信頼の証し。(預金を置いたままにしない)アクティブな口座数を増やしていきたい」と話す。

 大手行の中で口座とクレジットカード、ポイント、資産運用の連携で先行するのは、三井住友銀行の総合金融サービス「Olive(オリーブ)」だ。口座数は2月末時点で200万と順調に増えており、4年後には1200万を目指す。三井住友フィナンシャルグループの中島達社長は「預金が収益を生むようになる」と言い切る。

 みずほ銀行は2月下旬、東京・JR池袋駅の西口近くに、個人向けの新規口座開設に特化した店舗を開設した。学校帰りの学生や仕事帰りの社会人らが立ち寄りやすいよう、午前11時から午後6時半まで営業する。来店の多くは10~20代。将来は若年層にも関心の高い資産運用の相談体制も整える予定だ。【加藤美穂子、高田奈実、福富智】

タイトルとURLをコピーしました