なぜ「冬に巨大地震が起こるのか」…多くの人が知らない「その原因」

2011年3月11日、戦後最大の自然災害となる東日本大震災が発生した。あれから13年、令和6年能登半島地震をはじめ何度も震災が起きている。 【写真】日本人が青ざめる…突然命を奪う大災害「最悪すぎるシミュレーション」  しかしながら、これから起きうる大きな自然災害(首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山噴火)について本当の意味で防災意識を持っている人はどれほどいるだろうか。  もはや誰もが大地震から逃れられない時代、話題書『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれ、また、防災に必要なデータ・対策が1冊にまとまっている。  (※本記事は宮地美陽子『首都防衛』から抜粋・編集したものです)

南海トラフ巨大地震の「発生確率」

 政府地震調査委員会は今年1月、南海トラフで今後40年以内にマグニチュード8~9級の地震が発生する確率を「80~90%」から「90%程度」に引き上げた。  南海トラフはフィリピン海プレートと、ユーラシアプレートの境界にある海溝で、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下にもぐり込む時にユーラシアプレートの端を引き込む。これによってユーラシアプレートは次第に歪み、極限に達すると元に戻ろうと跳ね上がるのが地震発生のメカニズムだ。  南海トラフでは過去1400年間に約100年~200年の間隔で大地震が発生しており、最後に発生した南海トラフの地震は1944年の昭和東南海地震と1946年の昭和南海地震で今年で約78年が経過しており、いつ起きても不思議ではない。  南海トラフを囲む海では、少しでも早く地震や津波の兆候を察知しようと、観測網が張り巡らされている。想定震源域の海底には、地震・津波観測監視システム(DONET)が設置されており、地震計、水圧計などを組み込んだセンサーを備えて、国立研究開発法人防災科学技術研究所(防災科研)がリアルタイムで観測をしている。  これにより、津波の情報が高精度化、迅速化され、最大20分早く津波を検知することが期待されている。さらに、観測網の空白区だった高知県沖から日向灘にも、防災科研によって新たな海底地震津波観測網(N-net)の設置が進む。今年秋には室戸岬沖に新たな観測点が設置される計画。日本の巨大地震はこれまでも海域で起きており、海の変化がカギを握る。

地震は寒い季節に起きる?

 東京大学の辻健教授は、「気象と地震は関係している」として、季節ごとの海面の高さに注目をする。  一般的に夏は海面が高く、秋から海面が下がり始め、冬場は海面が低い。歴史を振り返ると、海溝型の巨大地震は秋から冬に起きていることが多い。  気象庁では9月から11月を秋、12月から2月を冬と定義しているが、関東大震災を引き起こした関東地震は1923年9月1日に発生し、その約220年前にほぼ同じ揺れに見舞われたとされる江戸の元禄地震は1703年12月31日に起きた。南海トラフ沿いでは、684年の白鳳地震から1946年の南海地震までの13回中、9月から11月に3回、12月から2月に7回、8月に3回。  辻教授は海溝型の巨大地震が特に冬に起きやすい理由を「地震が起きやすいプレート境界を押さえつけている海面からの力が、冬は海面が下がるため弱くなり、角度の緩いプレート境界断層の摩擦が小さくなることが原因の一つに考えられる」と解説する。  地震の被害で死者が最も多く出ると想定されるのは冬場の地震だ。冬は気温が低いため、津波から逃れても低体温症で亡くなる人が増える。暖房器具などで火を使っている家も多く、火災も多く発生することが予想される。冬型の「西高東低」の気圧配置で強い風が吹き、空気も乾燥しており延焼スピードも速まる。できれば寒い時期に地震が起きてほしくないものだ。  辻教授は「断層には多くの種類があり、全てをこの簡単なメカニズムでは説明できない。しかし最近のモニタリング技術により、地震を誘発する因子も明らかになりつつある」と解説する。もちろん春夏にも地震は起きているため、油断はできない。  つづく「『まさか死んでないよな…』ある日突然、日本人を襲う大災害『最悪のシミュレーション』」では、日本でかなりの確率で起こり得る「恐怖の大連動」の全容を具体的なケース・シミュレーションで描き出している。

宮地 美陽子(東京都知事政務担当特別秘書)

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