UPZ住民の9割避難は最長41時間 宮城県が女川事故時で試算 屋内退避増えれば渋滞抑制

 宮城県は東北電力女川原発(同県女川町、石巻市)の重大事故時に、5~30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)の住民の90%が避難するまで最長41時間かかるとする試算結果をまとめた。行政の指示があるまで屋内退避を続ける住民が増えれば避難経路の渋滞が防げ、5キロ圏内の予防的防護措置区域(PAZ)の要支援者をより早く避難させられるとの試算も示した。住民の理解を得られる情報発信ができるかが課題だ。

5パターンの風向きを想定

 UPZの試算は、5パターンの風向きを想定。影響が最大となる西北西と西向きの風の場合、女川、石巻など5市町の約16万人が避難対象となり、90%の避難が完了するまで41時間かかる。他の風向きでは、31時間50分~12時間だった。

 UPZの住民は避難計画上、PAZの住民が避難を始めるタイミングでは避難をせず、行政の指示があるまで屋内退避を続けるとされる。東京電力福島第1原発事故を参考に、計画より早く40%の住民が自主避難すると想定した。

 計画上、最優先で避難を始めるPAZの高齢者や入院患者の90%が避難するまでの時間は7時間10分。県はUPZの住民の自主避難率が0%(全員が計画通りに屋内退避を続ける)の場合も試算した。道路の渋滞が軽減され、高齢者らの避難時間は3時間に短縮されるとの結果が出た。

 UPZの住民の避難に関し、県は避難先ごとに経路を分ける「空間的分散」、避難のタイミングをずらす「時間的分散」の効果も試算し、住民一人一人の避難にかかる時間が短縮される効果が見込めるとした。

 UPZの住民が計画通りに屋内退避を続けるには国や県の情報発信が重要となる。村井嘉浩知事は11日の定例記者会見で「適切な情報を適切なタイミングで正しく送ることが重要だ。皆がバラバラに動いて渋滞を起こす方がマイナスだと伝えていく」と述べた。

 県は2020年にも避難時間の試算結果を公表した。渋滞対策などを前提に、PAZで67時間、UPZで70時間(風の影響が最大の場合)と推計した。事故の進展に応じた段階的な避難を考慮しないなど今回とは前提条件が違い、単純比較はできないという。

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