新型コロナウイルス禍も一段落し、外出する機会も増えたが、フィットネスクラブの倒産は過去最多を更新しているという。何があったのだろうか。
民間調査会社の東京商工リサーチによると、2023年度のフィットネスクラブの倒産件数は2月時点で28件。同社が調査を開始した1998年以降、最も多かった22年度の16件をすでに上回っている。健康志向の高まりで市場規模は拡大しているが、「業績不振が続くクラブの淘汰(とうた)が急速に進んでいる」と指摘する。
経済産業省の特定サービス産業動態統計調査によると、00年以降、フィットネスクラブの利用者数は右肩上がりで、ピーク時の18年は2億5600万人だった。だがコロナ禍で20年の利用者は1億7158万人まで減少。新型コロナの影響が落ち着くと利用者数は回復傾向にあり、23年は前年比3%増の2億1679万人まで回復した。
ただ、近年のフィットネスクラブの経営について、東京商工リサーチは「二極化している」と分析する。会費は高価格だが、設備やトレーナーなどが充実した大手クラブと、トレーニングマシンの種類が少なめだが安価な地場の企業が経営するクラブだ。さらに最近は安価でありながら、原則として全国どこでも使える簡易型トレーニングジム「chocoZAP(チョコザップ)」(フィットネス大手のライザップが運営)が参入。顧客獲得競争が激しさを増している。
2月までに倒産した28件はすべて、資本金1億円未満の個人企業や小規模事業者。負債額が1億円以上の事業者は7件に上る。また倒産の形態別では、破産27件、特別清算1件。東京商工リサーチは「事業を継続しない『消滅型』の倒産が多い。健康ブームに乗った無謀な先行投資が負担になった」とみている。
さらに最近は光熱費や人件費、設備代などコストは上昇傾向が続いている。売り上げが不振に陥ると資金繰りも一気に悪くなる傾向が出ている。「採算が取れないクラブの淘汰は続きそうだ」と指摘している。
調査は東京商工リサーチが負債1000万円以上のフィットネスクラブを集計、分析した。【嶋田夕子】