多くの日本人がじつは知らない、「47都道府県が維持できなくなる」かもしれない未来

人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。 【写真】意外と知らない、人生がうまくいかない人の「決定的な間違い」とは…?  100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来の地図帳』は、20年後の日本人はどこに暮らしているのか? 人口減少が「10年後、20年後の日本のどの地域を、いつごろ、どのような形で襲っていくのか? についての明らかにした書だ。  ※本記事は『未来の地図帳』から抜粋・編集したものです。また、本書は2019年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。

地域差が際立ってくる

 人口減少が2段階で進むこと以上に踏まえておかなければならないのが、人口減少も少子高齢化も全国一律に進むわけではないという点だ。  日本の総人口が増えていた時代でも過疎地は存在したし、人口が減り始めた現在でも人口が増えている自治体がある。これからいよいよ、地域差が際立ってくるのだ。全国の傾向を当てはめて個々の地域の取り組みを進めたならば、現実と合わない部分が増えていくばかりであろう。それではビジネスだってうまくいくはずがない。  この先、日本地図は大きく塗り替えられる。さらに言うならば、現在の日本列島とは全く違う姿に変貌するかもしれない。  塗り替えられた日本列島においては、現在の日本人の「常識」は大きく覆る。例えば、都道府県の枠組みだって、いつまで「47」が続くのか分からない。  社人研の「日本の地域別将来推計人口」(2018年)が、2015年から2045年までの30年間について、5年ごとに各地方自治体の人口を予測しているので、その数字を少し追ってみよう。  2045年時点の人口が最も少なくなるのは、鳥取県の44万8529人である。高知県も49万8460人で、50万人割れとなる。60万人を下回る県も3つに上る(島根県52万8988人、徳島県53万5370人、山梨県59万8935人)。現在の高松市の人口が42万人ほどだから、鳥取県は全県で一県庁所在地ほどの規模に縮小するということだ。  一方、人口集中が続く東京都は2030年にピークアウトするものの、2045年は1360万余を維持する。国政選挙のたびに「一票の格差」が問題となるが、これではいつまで経っても解消しない。区割りの是正が図られる端から、差が開き始めるのだ。

47都道府県は維持できない

写真:現代ビジネス

 とりわけ47都道府県の枠組みの中でやり繰りしなければならない参議院は、300小選挙区の衆議院と比べて是正が難しい。2016年の参議院選挙で2つの県をまたいで1つの選挙区とする「合区」(島根県と鳥取県、高知県と徳島県)に踏み切った。  該当県からは「地域の声が国政に反映されづらくなる」と、合区解消を求める声があがっているが、合区にしても抜本解決策には程遠い。人口激減時代に一票の公平さを追求するならば、行き着く先はかつて“銭酷区”と批判を集めた「全国区」へ戻すしかなくなる。  するとそれこそ、地域の声が反映されづらくなる。少しでも地域性を残すためには、発想を変えて、都道府県の枠組みのほうを根本的に見直すしかないだろう。  実際、都道府県の枠組みは、人々の暮らしと必ずしも一致しているわけではない。大都市圏では「昼間人口」と「夜間人口」の差が極めて大きい自治体があるように、県境を越えて多くの人々が通勤・通学している。政府は多くの行政サービスや各種統計を都道府県単位で考えているが、住民のほうは小売り店や医療機関など、自分の気に入ったところに出向いているのだ。  もっと身近な例で言うならば、都道府県対抗のスポーツ大会も同じだ。誕生してからずっとその県で暮らしてきた“出身者”だけでチームを結成することが困難な種目も出てきた。高校野球などはかねて「野球留学」が盛んだが、様々な関連性を見出して、他県出身の選手をかき集める種目はもはや珍しくない。  現時点では2045年より先の推計は試算されていないが、時代が進むにつれて都道府県格差は開き続けるだろう。それほど遠くはない未来まで展望するだけでも、このまま「47」を維持することは、どう考えても難しい。  ちなみに、現在の「1都1道2府43県」となったのは1972年だ。その原型は1871年の廃藩置県を経た1890年の府県制にまで遡る。府県制以来、一度も県の合併・分割は行われていない。もし再編となれば約130年ぶりの出来事となる。

河合 雅司(作家・ジャーナリスト)

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