人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。 【写真】意外と知らない、人生がうまくいかない人の「決定的な間違い」とは…? 100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来の地図帳』は、20年後の日本人はどこに暮らしているのか? 人口減少が「10年後、20年後の日本のどの地域を、いつごろ、どのような形で襲っていくのか? についての明らかにした書だ。 ※本記事は『未来の地図帳』から抜粋・編集したものです。また、本書は2019年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。
外国人労働者の限界
政府には人口減少対策として「無理解」とも思える動きさえ見られる。その典型例が、外国人労働者の受け入れ拡大だ。 安倍政権は経済界の強い要望を受けて、これまで認めてこなかった単純労働の容認に舵を切った。それどころか、強引とも思えるスピード審議で法制化を図り、彼らに永住の道も開く実質的な「移民政策」へと大転換をした。減っていく日本人の“穴埋め要員”としての期待である。多くの業界が競うように「対象業種」になるべく手を挙げた。 たしかに「人手不足倒産」は広がっている。外国人が大規模に来日するようになれば、多くの業種で目先の人手不足は解消されよう。 ただ、その発想は「現状の社会規模」を前提としている。「2019年の社会」を維持せんがために無理を重ね続ける手法に成算があるわけがない。問題の根本解決につながらないばかりか、むしろ日本の衰退を速めることになりかねない。 “助っ人”によって当面の生産態勢やサービスの提供態勢を維持できたとしても、足元が崩れるように国内マーケットが急速に縮む。 しかも、これからは80代以上の高齢者が増える。ひとり当たりの消費量が減り、年に応じてニーズも大きく変わっていく。果たして、誰に、何を、どれだけ売ろうというのか? まさか「労働者」の次は、旺盛な消費力を誇る「外国人消費者」の受け入れでもあるまい。遠からず生産過剰、サービス過剰となるのがオチである。 極めて目先の政策でしかない。 政策としての「怪しさ」もさることながら、「危うさ」も大きい。外国人労働者を大規模に受け入れている国は少なくないが、それらの国々は短期間での人口激減が見込まれているわけではない。人口が減る国で大規模に外国人を受け入れたなら、あっという間に国のカタチは変わってしまうだろう。人口が減るわけではない国でさえ社会は混乱し、大きな負担を抱え込んでいる。いまの日本に“壮大な社会実験”をしている余力などない。 外国人に安易に頼れば、人口減少に耐えられる国づくりへ転換していこうという気運は醸成されにくくなる。当然のことだが、社会の作り替えというのは、それなりに国民が若く、日本の「国力」が残っているうちのほうが成功させやすい。国内マーケットが本格的に縮み、多くの人が外国人の受け入れ拡大の行き詰まりに気付いて、慌てて転換しようと思った頃には、日本人の若者は激減してしまっていることだろう。 むしろ、こちらのほうが深刻かもしれない。人口減少対策は時間を要するだけに、大局を見失ってはならない。 もちろん、人口減少の恐ろしさを十分に理解している「心ある官僚」や「使命感を持った政治家」も少なくはない。だが、何かを憚っているかのように、その声は大きくならない。 地方自治体からも首をかしげたくなる発言や動きは少なくない。例えば、市町村長が語る「人口減少対策には地方分権を進めなければならない」という主張だ。「権限が移譲されなければ、地域経済は活性化できない」という理屈なのだろう。 地方分権は重要な政治課題である。地方への分権はできるかぎり進めるべきだろう。しかし、中央集権だから少子化になったわけではない。地方分権を進めることで日本全体の出生数が増えるのであれば、それほど簡単な話はない。いま問われているのは、日本全体として人口が減少してしまうことへの対策であり、人口減少スピードが速い地域の人々の暮らしをどう機能させていくか、その具体的手法を示すことである。