半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が進出した熊本県への関心が高まり、台湾からの観光客が急増している。台湾の航空会社2社が昨年9月に台北からの直行便を就航。熊本城などの観光地では「言語の壁」に戸惑う声が漏れる一方、百貨店の免税品売り上げが伸びるなど地域に盛況をもたらしている。
「熱烈歓迎」。2月上旬の熊本空港の国際線到着口。TSMCで働く男性(40)と妻、息子2人の4人は手作りの横断幕を掲げ、台湾の親戚6人を歓声とともに迎えた。男性の家族は昨秋から工場がある菊陽町の近隣市に住み始めた。
2年間の滞在予定で、「空気は新鮮で、自然が豊かだ」と住み心地に満足顔だ。ただ、仕事には言葉の問題が立ちはだかり「コミュニケーションが難しい」とこぼす。
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「台湾ではみんな熊本を知っている。くまモンとTSMCだ」。ツアー客約20人に熊本城を案内していた台湾の旅行会社添乗員徐大富(じょ・たふ)さん(60)も好印象だ。くまモンの人形焼きを販売する内田悠貴(うちだ・ゆき)さん(32)は「台湾の人が増えた。週末は行列ができる」と語る。
熊本県交通政策課によると、スターラックス航空と中華航空の直行便の搭乗率は昨年末まで8割超で推移し、大半が観光客だ。2月27日からは1往復増えて週12往復となった。観光庁の集計では、台湾人の昨年9~11月の県内延べ宿泊者数は8万2160人。直行便の就航前の6~8月と比べ約2万人増加した。
熊本老舗の鶴屋百貨店の免税品売上高は、昨年12月に過去最高を記録。国・地域別ではこれまでは中国が首位だったが、台湾が逆転し4割を占めた。担当者は「TSMC関係者の家族や友人の利用が増えた」と指摘する。
一方、内田さんは「意思疎通が難しい。もっと中国語を話せたら」ともどかしげな様子だ。鶴屋百貨店も台湾で使われる画数の多い漢字「繁体字」の案内を充実させるなど工夫を凝らす。
TSMCが量産を開始する今年10~12月に向け、台湾からの往来は加速するとみられる。文化交流団体「台熊友好会」の徐秋美(じょ・あきみ)会長(56)は「私も滞在当初は『言語の壁』に直面した。自治体職員はよく対応してくれるし、私たちも日常生活などできる限りサポートしていきたい」と話している。