仙台市は新型コロナウイルス感染症への対応をまとめた報告書「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応の記録と検証」を作成した。5類移行の昨年5月まで約3年5カ月を対象に、業務が逼迫(ひっぱく)し職員の負担が大きくなった市保健所などの状況を盛り込み、多岐にわたる課題を整理した。感染症の危機を想定し、業務継続計画(BCP)の策定などに生かす。
112事業の実績などを記す
報告書は551ページ。国内初の感染者が確認された2020年1月以降、市が取り組んだ「情報提供・共有」「予防・まん延防止」といったコロナ対応を7分野に分類した上で「検査体制の確保」「クラスター(感染者集団)対策」など計112事業の実績や課題を記した。
主なコロナ対策の実績や課題は表の通り。ワクチン接種は延べ321万7934回に上った。医療機関約400カ所の協力で実施した個別接種や、土日曜や平日夜間に会場を設けた集団接種を踏まえ「多様なニーズに応える体制を構築した」と総括した。
一方、21年1月に発足したワクチン接種推進室は人材不足が露呈。「保健衛生や医療の専門知識がある職員が配置されず、接種会場の準備、副反応疑いへの対応に苦慮した」ことを課題に挙げた。
20年4月には、市立小中高校の始業式、入学式を延期する連絡が式の前夜となる事態も起きた。「学校が新1年生の連絡先を把握しきれておらず、周知を徹底できなかった。知らないまま登校する児童もいて、迷惑をかけた」と説明。情報通信技術(ICT)を活用し、教育活動を止めない工夫の必要性を強調した。
50人から聞き取り、1年がかりで編集
市の対応について、感染症の専門家らが寄せた意見も載せた。東北医科薬科大の賀来満夫特任教授(感染制御学)は「市、東北大、市医師会が平時からコミュニケーションを取っていたことで、危機管理が効果的に行われた」と評価した。
報告書は事業を担った約60部署が提出した文書に加え、現在は他の部署にいる職員ら約50人から当時の状況を聞き取り、1年がかりで編集した。県によると、コロナ対応を検証する報告書の作成は県内の市町村で初めて。
大須賀淳・市新型コロナ調整担当課長は「前例のない事態に対応した教訓や知見を次の危機に生かすことが重要だ。新型インフルエンザの対策行動計画改定などに活用する」と話す。市は400部を製本し、3月下旬以降に市図書館や市民センターに置くほか、市ホームページに掲載する。
市によると、市内で確認された感染者は5類移行までに27万8673人、死者は475人。感染者の約8割が50歳未満だったのに対し、死者の8割以上は70歳以上だった。