地方にも「億ション」拡大、住宅地価上昇が波及…不動産業者「都心から郊外に流れてきている」

住宅地の地価上昇は、3大都市圏や地方の主要都市にとどまらず、周辺でも拡大した。販売価格が1億円を超える「億ション」は、地方にも増えている。今後は、日本銀行のマイナス金利政策解除に伴う住宅ローンへの影響が懸念されそうだ。(佐々木拓【3Dマップ】あなたの街の地価は?全国の地点一覧

「駅チカ」需要

「グランドシティタワー月島」のモデルルーム(東京都中央区で)

 住友不動産などは1月に、東京の湾岸エリアで地上58階建てのタワーマンション「グランドシティタワー月島」(東京都中央区)の第1期販売を行った。販売価格は1億~2億円が中心で、8割が売れたという。最寄り駅から徒歩5分という立地も決め手となった。

 不動産経済研究所の集計によると、東京23区は高額物件の販売が相次ぎ、2023年の新築マンション平均価格が1億1483万円と、初めて1億円を超えた。駅が近い「駅チカ物件」は、中古マンションの価格も高騰している。

 24年の公示地価で、東京都の上昇率は23年調査よりも、1・5ポイント高い4・1%だった。

 全国の住宅地の上昇率は0・6ポイント大きい2・0%で、かつて10%の高い伸びを示していたバブル景気の1991年以来、33年ぶりの高さとなる。上昇した都道府県は23年調査よりも5県多い29都道府県となった。福岡県の5・2%、宮城県の4・7%、北海道の4・4%など、主要都市がある自治体で値上がりが目立つ。

「都心より郊外」

(写真:読売新聞)

 地価の上昇は、埼玉県や千葉県といった近隣にも及んでいる。東京駅までJR線で30分の埼玉県蕨市は、住宅地の上昇率が6・0%だった。地元で不動産会社を営む村田健悟さんは、「都心のマンションを希望していた人が郊外に流れてきている」と話す。

 不動産調査会社の東京カンテイによれば、22年の時点で、東京都、大阪府、愛知県以外で販売された億ションは450戸を超え、10年前の7倍となった。23年も高い水準を維持しているという。高松市や佐賀市でも来年の完成を目指して建設が進んでいる。

 東京カンテイの井出武上席主任研究員は「賃貸物件の家賃も上がっており、同じ金額を払うのならば、資産にしたいという人が全国で増えている」と話す。

金利上昇の恐れ

 不動産価格の高止まりに変化が出るとすれば、住宅ローン金利の動向だ。

 金利の低い状況が続き、共働きで世帯収入の多いパワーカップルが長期のペアローンを組んで、高額物件を購入するケースは多い。多くは短期金利に連動する変動型を採用しており、今後、日銀が追加利上げに踏み切れば、住宅ローンの金利は上昇する恐れもある。

 金利が高くなれば、住宅の購入が減って、不動産市場に冷や水を浴びせることになりかねない。不動産協会の吉田淳一理事長(三菱地所会長)は、「金利上昇による消費者心理への影響が懸念される。建築費も高騰しており、事業者側の資金調達にも影響が出かねない」と話している。

 一方、人口減少が続く地方では、下落率が大きい地点も多い。愛知県南知多町は住宅地の下落率上位10地点のうち、5地点を占めた。

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