国が再生可能エネルギーの主力と位置付ける太陽光発電を巡るトラブルが後を絶たない。総務省が26日公表した調査結果では、自治体の4割超が発電事業者とトラブルを抱えている実態が明らかになった。設置を規制する独自ルールをつくった自治体も2割近くに上るが、地域住民を悩ます課題解消にはほど遠いのが実情だ。
地方自治研究機構によると、太陽光発電施設の設置を規制する条例を持つ自治体は現時点で少なくとも272。平成26年に大分県由布市と岩手県遠野市が制定したのを皮切りに、全自治体の約16%で規制強化の動きが広がる。
都道府県として全国に先駆けてパネル設置の届け出を義務化した兵庫県は、事業面積が5千平方メートル以上の発電施設のうち、民有林で3千平方メートルを超えて切り土や盛り土をする場合は許可制とする条例改正案を議会に提出した。
太陽光パネルの崩落事故が県内各地で相次いだことや、今後古くなったパネルの大量廃棄が見込まれることなどを考慮し、さらなる規制強化に踏み切った。今年10月の施行を目指す。
再エネ課税を独自に創設した自治体もある。
宮城県は4月、森林を大規模開発した事業者から税を徴収する全国初の条例を施行する。税収を目的とせず、課税によって事業者と住民のトラブル解消を図る狙いだが、同県丸森町にメガソーラー(大規模太陽光発電所)の建設を予定していた東京の事業者は、施行を前に計画断念を町側に申し入れた。
国内最大級のメガソーラーが立地する岡山県美作市は、令和3年12月に太陽光パネル1平方メートルあたり50円を課すパネル税条例を制定した。ところが、総務相の同意が必要となる法定外目的税の導入に事業者側が猛反発。総務相は事業者と再度協議するよう市に要請し、事実上の「待った」をかけた。
市によると、協議は再開したものの、認識の隔たりは埋まらず、今も平行線のまま。年間1億1千万円を見込む税収は、発電所周辺での豪雨災害の安全対策工事費などに充てる計画だったが、同市の担当者は「正直、折り合いがつく見通しは立っていない」と話す。
政府の買い取り価格制度の単価下落に加え、自治体の規制強化や課税の動きが広がり、メガソーラーから撤退する事業者も目立つ。再エネ普及による脱炭素社会の実現という政府の思惑は曲がり角を迎えつつある。(白岩賢太)