「味がしない!コロナかと思ったら…」花粉症がひどくなって味覚障害に!? 今年の花粉症は…専門医に聞いた

「味がしない!コロナかと思ったら…」

花粉症がひどくなって味覚障害になったという投稿が、SNSで相次いでいます。

投稿によると、「花粉症が悪化して副鼻腔炎(蓄膿症)を発症して味覚障害になった」「鼻が詰まって匂いも味も分からなくなった」といった、花粉症がきっかけに味覚や嗅覚異常を訴える人たちが続出。中には「味覚がなくなり、コロナかと思ったら花粉症だった」と、味覚異常の症状も出る新型コロナウイルスと勘違いしたとの声も上がっています。

実際のところ、今年は花粉症で味覚障害になる人が増えているのでしょうか? X(旧Twitter)で花粉症に関わる情報を発信している耳鼻咽喉科専門医のDr.おべさん(@dr_obebe)に聞きました。

花粉飛散量は少ないと予想されていたが…例年よりつらいと訴える患者が多い

──今年は花粉症(スギ花粉)がひどくなって味覚や嗅覚異常などを訴える人がいるようですが。

「2023年の花粉飛散量がかなり多かったので、2024年は花粉飛散量は少ないなどと予想されていました。しかし、症状のひどさでいうと例年よりはつらいと訴える患者さんが多い印象です。単純な花粉飛散量だけではなく、ここ数年間は新型コロナウイルス(COVID-19)の影響でマスクを着用して過ごす人が多かったですが、今年はマスクをしない人がより増えたことも原因の一つかなと思っています。

また今年は暖冬のため花粉飛散時期が早まるとの予想でしたが、外来患者さんの数や花粉症患者でもある私自身の症状からは、関東では例年と同じ印象でした。あとは、統計でも出ていますが小児のスギ花粉症の相談も増えています」

──なるほど。例年と変わらない花粉飛散量のようですが、コロナ感染も落ち着きマスクをしない人が増えたと。そこで症状が重くなってしまう人も多いのかもしれませんね。

「はい。花粉症のコントロールが不十分のために副鼻腔炎や咽頭炎にまでなってしまうという患者は実はけっこう多いです。そうなった場合は自然治癒は難しく、耳鼻科受診が必要です。抗生物質と去痰薬(たんきり薬)を足しつつ、花粉症の治療薬のベースアップで対応しています。

その中にそこまで多くはないですが週に数人ほど、味覚障害を訴える患者さんはいました。味覚障害の症状としては甘味だけわかる、塩味だけわかるなどの特定の味覚だけ残存する人や、全体的に味がしないという人や、口の中が常に苦いという人などまちまちで一定の傾向はない印象です」

──味覚だけではなく、嗅覚異常も訴える人もいるとか。

「味を感じるうえで味覚と嗅覚というものは密接な関係です。本人は味の感じ方が変だから味覚障害と思っていても、実は味覚は正常で嗅覚障害で味が変に感じている場合も多く見極めが大切です。あとは鼻詰まりにより口呼吸がふえて、さらに一部の花粉症治療薬で唾液分泌が減ることで口腔内が乾燥し味が感じにくくなる場合もあります。そのあたりを問診と鼻腔内所見・咽頭所見と照らし合わせながら、われわれ耳鼻科医は鑑別していきます」

味覚・嗅覚障害になった場合、花粉症などの症状が改善されれば治る?

──花粉症などにより味覚・嗅覚障害となった場合、花粉症の症状が改善されれば完治しますか?

「一般的には副鼻腔炎や咽頭炎の症状が改善するにつれて、粘膜の状態が改善するため、多少の前後はありますが1、2週間以内に満足のいく嗅覚・味覚まで戻ることが多いです。しかし副鼻腔炎が治った後も嗅覚障害がしばらく残る場合もあり、『感冒後嗅覚障害』という病名がついています。統計的には中高年女性に多いとされています。

この場合は病態はコロナ後遺症に近く半年から年単位で改善しないこともあります。もちろん花粉症の鼻詰まりによる嗅覚障害は花粉症治療薬の強化や点鼻薬の併用で鼻詰まりが改善すれば治ることが多いです。口腔内の乾燥による味覚障害も鼻詰まりの改善やくすりの変更などで対応すれば徐々に戻ってきます」

──来年に備えて、花粉症がひどくなる前の対処法などありましたら教えてください。

「我慢をして症状がひどくなってから受診するのではなく、初期の花粉を感じた段階で受診することをオススメします。初期の1月〜2月上旬ならまだ耳鼻科も比較的空いているのでピーク時ほど病院で待たずに済むかと思います。また、症状がひどくなってから薬をのんでも鼻咽腔粘膜はボロボロの状態なので不調が続くことが多いです。初期から治療することで粘膜の調子も安定し副鼻腔炎や咽頭炎のリスクを減らせます。

そして地味に大切なのが、自分が花粉症であることを認めることです。花粉症と認めると症状が一気に悪くなるから認めたくないという人、うすうす花粉症と気づいていても認められない人もかなりいると思います。実は私も大学3年生で急に花粉症になったときに認められなかったので気持ちはよく分かります。そんな人は花粉症であることは認めなくていいので、まずは薬を飲んでみてください。すごく楽になるはずです」

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2月に電子書籍「花粉症の正しい治療法〜アレルギー性鼻炎の新常識〜」(Kindle)を出版したばかりという、おべさん。「重症花粉症患者でもあり耳鼻咽喉科専門医でもある私がアレルギー性鼻炎・花粉症について向き合い、実体験も交えてわかりやすく治療法について解説した本を出版しました。ただ出された薬を何も考えず飲むのではなく、少し理解したうえで自分に合ったくすりを飲むことで、より大きな治療効果を期待できます。漢方や舌下免疫療法や最新の注射薬についてもまとめてありますので興味のある方は一読ください。またXでも花粉症についてのお役立ち情報を発信してますのであわせてぜひご活用ください」と話してくれました。

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

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