ICC、世界4か所に「地域事務所」検討…アジア候補地は日本有力

【ブリュッセル=酒井圭吾】戦争犯罪を裁く国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)が、世界4か所に地域事務所の設置を検討していることが明らかになった。アジアでは、日本が有力な候補地だ。ICCは今月末までに加盟国に事務所設置に関する概要案を提示する。外交筋が本紙に明らかにした。

 年末に予定するICCの総会で承認を得て、2026年の設置実現を目指す。地域事務所の設置を通じて加盟124か国・地域との連携を深めるとともに、非加盟国に活動への理解を求めて加盟を促す狙いがある。

 地域事務所の候補地はアジアとアフリカ、南米、東欧。ロシアの侵略を受けるウクライナには昨年9月、戦争犯罪の証拠収集に特化した事務所が置かれたが、加盟国との協力強化などが目的の事務所はなかった。

 国際法を無視したロシアによる侵略などを受けて「法の支配」の重要性が注目される中、昨年末から設置議論が本格化していた。

 ジェノサイド(集団殺害)や戦争犯罪などに関わった個人を訴追するICCが行う逮捕状の執行や証拠収集には、加盟国の協力が不可欠だ。ただ、友好国への配慮から捜査に非協力的な加盟国も少なくない。

 ICCによると、米中露など国連加盟国のうち3分の1は加盟していない。アジアでは55か国中、19か国にとどまっている。自国の軍人が戦争犯罪に問われることなどを懸念しているとみられている。ICCは非加盟国にICCの理念を伝え、加盟に理解を求める。各地で大学や法曹界と協力して国際法に精通した人材の育成も図るという。

 アジアの地域事務所は、日本と韓国が候補地に挙がっている。日本はICCに対する最大の拠出国で、赤根智子判事が今月、ICCの所長に選任されたばかりで追い風になりそうだ。

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