人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。
100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来の地図帳』は、20年後の日本人はどこに暮らしているのか?人口減少が10年後、20年後の日本のどの地域を、いつごろ、どのような形で襲っていくのか?についての明らかにした書だ。
※本記事は『未来の地図帳』から抜粋・編集したものです。また、本書は2019年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。
川崎、さいたま、福岡は人口を維持
2035年の政令指定都市の姿を描いてみよう。
2015年よりも人口が少なくなる政令指定都市は、2020年時点では北九州、静岡、堺、新潟、神戸、浜松、京都、相模原、大阪の9都市だったが、2025年には仙台、横浜、熊本が加わり、2035年には千葉市(2030年に2015年水準を下回る)を含め、名古屋、札幌、広島、岡山といったそれぞれの地域で突出して人口の多い政令指定都市までが仲間入りする。
20ある政令指定都市のうち、85%が人口減少となる。名古屋、札幌、広島、岡山といった都市は、周辺の自治体から人口を吸い上げる形で人口を拡大・維持してきたのだが、この頃になると吸い上げようにも源泉が枯渇してしまっているということだ。
2035年時点でも2015年の人口水準を上回っている政令指定都市は川崎市、さいたま市、福岡市だけとなる。川崎市は2035年の156万6780人が人口のピークだ。さいたま市は2030年の131万8050人で頂点を迎えており、この頃には人口減少となっている。現時点では人口増加が際立っている福岡市は167万7404人まで増えるが、「170万人」を突破することなく、人口が減り始める。
そうした意味では、2035年というのは政令指定都市にとっての分岐点の年であり、大都市の在り方を見直していく「元年」ともなろう。
年齢別では、高齢化の波が政令指定都市にも大きく押し寄せる。
最も高齢化が進むのは神戸市で34.8%だ。次いで札幌市、静岡市、北九州市が34.6%の同率で並ぶ。20ある政令指定都市のうち、実に13都市が30%以上となる。残る7市を見ても、最も水準の低い川崎市が25.6%となるなど、すべてが25%以上となる。政令指定都市住民の3人か4人に1人は高齢者ということだ。
75歳以上に絞っても北九州市が21.6%、新潟市21.2%、札幌と神戸の両市が21.1%、静岡市20.8%、浜松市20.7%、仙台市20.3%と7都市で2割を超える。
75歳以上の割合が低いのは川崎市(13.8%)、福岡市(15.8%)、大阪市(16.1%)、名古屋市(16.3%)などだが、65歳以上は25%を超えているので、決して街が若いわけではない。
こうした率を実数にしてみるとイメージしやすい。横浜市の65歳以上人口は109万2206人を数える。市内に「高齢者のみの政令指定都市」を抱えているようなものである。大阪市74万1954人、札幌市66万6522人、名古屋市65万2466人などだ。横浜市の場合、75歳以上だけでも61万1655人を数える。
参考までに紹介すると、2035年の鳥取県の人口は49万4893人、高知県は57万5728人だ。
高齢化というと「過疎化が進んだ地方の町村の課題」というイメージを抱きがちだが、それはこれまでは地方のほうが高齢化の進み具合が早かったからである。今後は絶対数が増える大都市こそ、高齢者を大規模に抱える街になるのである。