東京都とその周辺地域を含めた「東京圏」のことし1月時点の土地の価格は、去年と比べて平均でプラス4.0%と、3年連続で上昇しました。
勤務先に近い都心部の住宅地で地価が大きく上昇するなど、利便性を重視する動きが地価に反映されました。
国土交通省は全国およそ2万6000地点を対象に1月1日時点の価格を調べた「地価公示」の結果を公表しました。
それによりますと、東京を中心に埼玉、千葉、神奈川、茨城の4県の一部を含む「東京圏」の地価は住宅地や商業地などをあわせた全体の平均が去年と比べてプラス4.0%となり、3年連続で上昇しました。
上昇率も去年より1.6ポイント拡大しました。
用途別にみると、住宅地はプラス3.4%で、上昇率は1.3ポイント拡大しました。
このうち、東京23区はプラス5.4%と東京圏の住宅地の平均を上回る上昇率となりました。
新型コロナウイルスの影響が薄れ、出社を再開する企業が広がるなか、通勤などに便利な豊島区や中央区といった地域で地価の上昇が顕著になっています。
また、周辺の4県では、千葉市や横浜市、川崎市などで上昇率が拡大したほか、都心部へのアクセスがよい鉄道の沿線を中心に上昇しました。
一方、商業地は平均でプラス5.6%となり、去年より上昇率が2.6ポイント拡大しました。
このうち東京23区は全体でプラス7.0%で上昇率は3.4ポイント拡大しました。
また周辺では、千葉市がプラス7.4%、横浜市がプラス6.0%川崎市がプラス7.1%と高い伸びとなりました。
オフィス需要が底堅く推移したほか、円安を背景とした外国人観光客の増加で飲食店やホテルなどの業種で、土地の需要が増えたことなどが地価を押し上げました。
今回、住宅地が大きく伸びた東京圏。
それをけん引しているのが豊島区や港区といった都心部で、伸び率は7%を超えています。
それが顕著に表れているのが都心のマンション価格です。
不動産調査会社「東京カンテイ」によりますと、去年、東京23区で発売されたマンションの平均価格は1戸あたり1億1630万円と、おととしに比べて3300万円余り、率にして41%伸びました。
資材価格の高騰などで工事費が上昇しているという面もありますが、新型コロナの5類への移行で出勤などに便利な都心部のマンションに人気が集中しているのも一因です。
大手不動産会社が売り出している東京・渋谷区のマンションは、1戸あたりおよそ2億円から5億円台と高額ですが、完成予定まであと2年近くを残して、これまでに売り出した65戸はすべて完売しています。
最寄り駅まで徒歩7分という利便性や敷地の広さなどで人気を集め、国内の富裕層や共働きで世帯収入の高い「パワーカップル」のほか、海外の投資家などが購入するケースもあるということです。
物件のホームページを通じた問い合わせも6000件を超えているということで、販売する三菱地所レジデンスの渡邊聡さんは「都心のマンション供給が減っていることや高級住宅街に建つ立地の希少性も反応の多さに繋がっている。物価高で工事費や販売価格が上昇するなかでも、富裕層を中心に堅調な需要がある」と話していました。
地価の上昇などに伴う住宅価格の高騰が続くなか、東京の子育て世代が神奈川、埼玉、千葉に転出する「脱・東京」の動きが続いています。
去年1年間で転出超過は、1万7000人余りに上り、内閣府は「子育て世代が住宅価格が安い首都圏近郊に向かっていることを示唆している」と指摘しています。
総務省が公表する「人口移動報告」をもとに、東京と神奈川、埼玉、千葉の人口移動を年齢別に分析したところ、20代は、すべての県で、東京への転入超過だった一方、子育て世代にあたる30代と40代、そして、その子ども世代にあたる14歳以下は、それぞれ転出超過となり、あわせて1万7102人に上りました。
内訳は、東京から埼玉県への転出超過が最も多く8086人で、次いで、千葉県が4557人、神奈川県が4459人となっています。
こうした動きは、2020年ごろから顕著となっていて、内閣府はことし2月に公表した経済レポートのなかで、「都内ではファミリー向けの賃貸やマンション価格が上昇を続けており、子育て世代が住宅価格や賃料の低い首都圏近郊へ向かっていることを示唆している」と指摘しています。
そのうえで、「子育て世代が住宅を購入できない場合、中長期的に就業率や出生率の低下につながる可能性がある」として、「公的住宅の供給拡大といった供給面の施策を進めることで、子育て世代の住まいを確保する必要がある」と提言しています。
子育て世代のなかには、都内で住宅を探したものの、予算に合う物件が見つからず、郊外に移り住む決断をした人もいます。
都内の社宅に住んでいた40代と30代の夫婦です。
6歳の娘が小学校に入学する前に新たな住まいを決めようと、1年以上前から、東京23区内で、家族4人で住める広さの物件を探し始めました。
しかし、都内の分譲マンションは値上がりしていて、7000万円の予算に収まる物件は見つからなかったといいます。
都内で賃貸も探しましたが、ファミリー向けの物件は少なく、賃料も高止まりしていたため、断念し、最終的に、通勤時間や、教育環境などを考慮して、千葉県習志野市の賃貸マンションに住むことを決め今月下旬、都内の社宅から引っ越しました。
習志野市内でも、新築マンションは8000万円を超えるということで、夫婦は、賃貸に住みながら今後も予算に合う物件を探し続けることにしています。
30代の妻は「習志野市内でも10件以上物件を見ましたが、都内に比べて、大きく値下がりしている感じはなく、時間切れで今は仮住まいです。まだ家探しが続くと思うと憂うつな気持ちもありますが、気持ちを切り替えて前向きに新生活を送りたいと思います」と話していました。
長野県にあるスキー場と温泉が人気の村では、インバウンド需要を取り込もうと、外国人投資家による不動産投資が活発になり、村の中心部の住宅価格が上昇しています。
このため、移住者などが購入しやすい価格の住宅が不足しているとして、村が対策に乗り出しています。
観光客に人気の野沢温泉村では、インバウンド需要を取り込もうと外国人投資家が、空き家に加え、廃業を予定している旅館などを購入し、宿泊施設や飲食店をオープンする動きが広がっています。
このため、住宅地の地価の平均が、去年、3年ぶりに上昇に転じ、ことしも13%の伸びとなりました。
外国人投資家の1人でイギリス人のピーター・ダグラスさんは、村内で14の宿泊施設を経営していて、このうち去年は、1泊、最大17万円ほどする富裕層向けを新たにオープンさせました。
本格的なスキーシーズンとなることし1月と2月は、経営するすべての宿泊施設でほぼ満室だったとしていて、今後もインバウンド需要を取り込みたいと考える投資家が増えるとみています。
ピーターさんは「野沢温泉村は、もともと有名な観光地だが、人気が高まっている。ビジネスをしたいという外国人投資家もどんどん増えているので、村はさらに有名になると思う」と話していました。
一方、活発化する不動産投資に伴って、村の住宅事情に変化が出ています。
野沢温泉村によりますと、温泉街のある村の中心部は、住宅価格が上昇し、移住者などが購入しやすい価格の住宅が不足しているとしています。
このため村は、4億5000万円余りをかけて、移住者などが入居できる集合住宅を2棟建設する計画で、ことし12月からの受け入れを予定しています。
野沢温泉村建設水道課の荒井直喜課長は「外国人の投資家が、私たちの想定を大きく上回る高い金額で物件を購入しているため、移住者などが購入できる住宅がなくなってきている。村が住宅を整備することで移住や定住をしやすい環境を整えたい」と話していました。