「ナノテラス」が1日に本格稼働 東北のイノベーション拠点へ 「巨大顕微鏡」で価値創造

世界最高レベルの性能を持つ次世代放射光施設「ナノテラス」が1日、本格稼働する。ナノ(10億分の1)の世界を可視化する「巨大な顕微鏡」は学術にとどまらず、産業での新たな価値創造の可能性を秘める。東日本大震災で大きな被害を受けた東北にイノベーション(技術革新)をもたらす施設として、大きな期待が集まる。

[ナノテラス] 周長349メートルの円形加速器で光速近くまで加速した電子を電磁力で曲げた際に発生する高輝度のエックス線を使うことで、物質をナノレベルで観測できる。食品や創薬に加え、高性能触媒といった新素材開発など幅広い領域への応用が見込まれる。

 スプリング8(兵庫県佐用町)など他の放射光施設と比べ、物質表面で起こる反応や電子の状態の観測に適した波長の長い光(軟エックス線)を出すことができる。

 放射光を取り出すビームラインは計10本。うち7本は主に産業向けを想定。出資したコアリション(有志連合)メンバーに利用する権利があり、参加意向を示す民間企業は150を超える。残りの3本は大学などの先端研究に用いる。

 整備費の確保は「官民地域パートナーシップ」という国内初の枠組みを採用。国が約200億円、光科学イノベーションセンター(仙台市)と宮城県、仙台市、東北大、東北経済連合会の5者がパートナーとして180億円を拠出した。

 東北大青葉山新キャンパス(仙台市青葉区)で2020年3月に着工。23年12月には放射光を実験設備へ初めて引き込む「ファーストビーム」に成功し、最終調整を進めた。

 地元運営主体の光科学イノベーションセンターの高田昌樹理事長は、仙台市内で3月にあったフォーラムで「ナノテラスを使って社会課題を解決することがゴールだ。東北発のイノベーションを生み出すインキュベーター(ふ卵器)となる」と意気込みを語った。

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