日本は確実に「二極化」が進行する…そして東京が破綻を迎える日がやってくる

人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。 【写真】人生で「成功する人」と「失敗する人」の大きな違い  100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来の地図帳』は、20年後の日本人はどこに暮らしているのか? 人口減少が10年後、20年後の日本のどの地域を、いつごろ、どのような形で襲っていくのか? についての明らかにした書だ。  ※本記事は『未来の地図帳』から抜粋・編集したものです。また、本書は2019年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。

二極化が進行する

 まず踏まえておかなければならないのが、人口減少や少子高齢化が全国一律に進むわけではないことの難しさだ。  私は東京一極集中の是正は必要であると考える。東京圏に住む人々は食料もエネルギーも若き労働力までをも地方に依存しているからだ。だが、一極集中は止まるどころか、加速している。地方の人口減少スピードの凄まじさを考えたとき、もはやこうした現実を前提として考えざるを得ない時期に来ているだろう。  誤解していただきたくないが、私は一極集中是正のための努力を止めてしまっていいと言っているわけではない。さらに力を注いでいかなければならないと思っている。ただ、是正の効果が現れるのを待っている時間的余裕がいまの日本にはなくなったということだ。  令和時代の日本列島では、東京圏の人口膨張と、人口が大きく減りゆく地方の拡大という二極化が進行していく。そして地方同士では、しばらくは政令指定都市などの中心市街地に人口が集中していく。  ただし、今後の東京は、これまで誰も見たことのない新しい顔を見せ始める。急ピッチの高齢化は、これまでの成功パターンをことごとく否定するだろう。少子化によって地方に若者がいなくなることから、大企業ですら思うように若者を雇用できないところが出てこよう。それは、イノベーションが起こりづらくなるということであり、新商品がなかなか誕生しなくなるマンネリ化を招く。あるいは、高齢者の増大が介護離職者や介護のための遅刻・早退を日常的な風景とし、生産性を押し下げる。東京に本社を置く企業の数を減らすことになるかもしれない。少子高齢化が続く以上、東京圏がこれまでの手法にしがみつき続けたとしても、いつの日か破綻を迎える。  それでも人口が目に見えて減るわけではない東京圏は、巨艦がすぐに方向転換できないが如く、しばらくの間は“勝利なき戦い”に挑み続けるに違いない。であるならば、この状況を逆手にとることだ。  過去の栄光が“貯金”として残っているうちは、東京圏にも暫くは勝ち目がある。拡大路線による過去の成功モデルで東京圏が日本の経済成長を何とか牽引しているうちに、人口減少が続く地方の社会基盤を、人口が減ってもやっていけるように根本から作り直すのだ。  日本の最大のピンチは、団塊世代と団塊ジュニア世代がともに高齢者となり、65歳以上人口がピークを迎える「2042年問題」である(拙著『未来の年表』をお読みいただきたい)。ここを「当面のゴール」と位置付けたい。残り時間を考えれば、かなりの綱渡りとはなるが、この「現実を見据えた道」を進むしか今の日本には選択肢が残されていない。

面的広がりからの脱却

写真:現代ビジネス

 社会の作り直しに臨む地方は、面的広がりの発想から早急に脱却を図らねばならない。  ひと口に「地方」と言ってもそれぞれに置かれた状況が異なる。取り組むべき課題は大きく違うが、「地方」に共通して言えることは、新幹線や高速道路を延伸したり、大企業を誘致したり、宅地造成を進めたりといった従来の開発型発展モデルにしがみついている場合ではないということだ。日本では、そうした時代はすでに終焉している。  多くの地方都市は、東京圏と同じく県庁や市役所、あるいは主要駅などを中心として放射線状に広がる街づくりをしてきた。新幹線や高速道路でつながり、東京への「時間的近さ」を競うように物流や人的交流を促してきた。しかしながら、こうした努力は早晩、意味をなさなくなる。  内閣府の資料が、東京都を除く46道府県庁所在地の人口集中地区(DID)の面積と人口密度について、1970年と2015年とを比較しているが、多くの都市で人口の伸び以上に市街地が拡大し、市街地内の人口密度が低下してしまっている。  ましてや、今後は少子高齢化が進み、人口が激減していくのである。広げすぎた街並みを畳んでいかない限り、政令指定都市であってもいつの日にか「賑わい」を維持することが難しくなるだろう。  定住人口の綱引きも、根本解決にならないのだから早急に止めるべきだ。過度の子育て支援策や定住支援策に充てる予算を、街のコンパクト化やスマート化に振り向けたほうが、結果として将来に向けた地域の存続の可能性は大きくなる。  とはいえ、戦後70年以上の時間をかけて広げてきた街並みをそう簡単には縮小できないだろう。だから私は、自治体をベースとした発想から転換すべきだと訴えているのである。私は本書で、「人口減少社会においてはエリアマネジメントという考え方が非常に重要になる」と説明してきた。住民が激減する地域が増えるなかで、社会の仕組みや産業構造を「2019年」のまま維持していくのには無理がある。そうした努力を重ねたところで、どこかの時点で社会は行き詰まる。多くの地域で人が住めなくなり、あるいは産業が競争力を失って、日本人の暮らしは貧しくなることだろう。  むしろ、人口が多少減ろうとも、世界の中で「なくてはならない存在」を目指したほうが、豊かさは維持しやすい。そのためには、人々が社会課題を共有でき、地域の目標を設定しやすい社会規模に置き換えて考えることだ。市区町村よりも、もっと小さなエリアを「ひとつの社会」としてマネジメントしたほうが、地域の目標は達成しやすくなるし、住民の理解や協力も得やすい。  ベストの方法ではないかもしれないが、日本の残り時間を考えたならば、もはやそうした拠点を築いていくしか、とりわけ地方は人口激減時代を乗り越えることはできない。

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