飲食店などのバイト不足解消は遠く 東北学院大が中心部に移転しても効果は限定的

2023年4月の東北学院大五橋キャンパス(仙台市若林区)の開設で、JR仙台駅周辺の慢性的なアルバイト不足が改善されるとの飲食店関係者の期待が肩透かしを食っている。市中心部に通う東北学院大生は約7000人増えたが、人手不足を満たすほどの影響はなかったとの声が支配的。学生アルバイト事情を探ると、働く意識の多様化が背景に浮かんだ。
(せんだい情報部・門田一徳)

働く意識の多様化も影響

 東北学院大生が運営する学生アルバイト委員会は五橋キャンパスのオープンに合わせ、本部を泉から土樋のキャンパスに移転させた。毎月10件前後届く求人の勤務地の主軸は、泉区から市中心部に変わった。

 学生が希望する時給の相場も上昇する。宮城県の最低賃金は23年10月、40円増の923円にアップしたが、アルバイト委委員長の3年山崎聖和さん(20)=若林区=は「学生の希望は時給1000円以上が普通」と話す。

 求人情報サイト「バイトル」を運営するディップ(東京)によると、県内の主な業種のアルバイト時給は右肩上がりで推移(グラフ)。24年1月時点で、サービスやフード・飲食は時給1000円を超える。

 同社仙台オフィス(青葉区)の柴田耕佑さん(37)は「市中心部のアルバイト学生のうち東北学院大生の割合は3割から5割に増えた印象があるが、慢性的な人手不足を解消するほどの影響はなかった」と指摘する。大学生の働き方の変化を一因に挙げ「募集条件を『週4日以上勤務』とするよりも『週2、3日から可』とした方が明らかに集まりが良い」と説明する。

 大学生の間では、バイト先や勤務時間を固定せず、空き時間に仕事をする「隙間バイト」のアプリ活用も増えている。アプリサービスを展開するタイミー(東京)によると、21年の東北支社設立時からの登録者数は24年2月末時点で5・5倍に急増し、約3割を学生が占める。

 宮城教育大大学院2年平塚祐樹さん(24)=青葉区=は1年前にタイミーを使ってトヨタレンタリース宮城仙台駅西口店(青葉区)でアルバイトに入るようになり1カ月後、固定シフトに移行した。「隙間バイトしたレンタカー会社の中で一番働きやすかった。時給も20円上がった」と満足した様子だ。

 タイミー広報の荒川真志歩さん(29)は「隙間バイトの求人だけでなく、長期採用の目的で利用する企業も増えている」と指摘する。慢性的なアルバイト不足を打開しようと、知恵を絞る市内の会社もある。

面談でケア、店舗集約… 飲食店は人材確保に力

 仙台市中心部では商業ビルの再開発に伴う飲食店などの出店が相次ぐ一方、そこで働くアルバイト不足が慢性化している。飲食店を展開する地元企業は、勤務シフトのミスマッチを減らそうと定期面談の実施、系列店の仙台駅周辺への集約など限られた人材の確保や調整に力を入れる。

 3月下旬の夕刻、青葉区中央3丁目のファッションビル仙台パルコ2にある居酒屋「いづも」。アルバイトの東北学院大2年新堀奏さん(19)=若林区=が、店長との定期面談に臨んでいた。

 「月7万円ぐらい稼ぎたいです」「大型連休は実家に3、4日戻りますが、それ以外は働けます」。シフトや休みの希望などを15分ほど相談した。

 新堀さんは2023年4月、同店で調理担当のアルバイトを始め、今は接客も任されている。「稼ぎたい時や休みたい時の希望を聞いてもらえる」と職場の風通しの良さを語る。

 いづもを運営するのは、市内で8店の飲食店などを展開する「クロールアップ」(若林区)。学生を中心に計約60人のアルバイトを雇用。店長とアルバイトの面談は19年に始め、約3カ月ごとに実施する。

 同社では以前、採用したアルバイト3人のうち2人がわずか2カ月で辞めるなど離職対策が課題となっていた。採用後のケアを目的とした面談を始めてからは、離職がほとんどなくなったという。

 及川大生社長は「離職の原因はシフトのミスマッチやコミュニケーション不足だったと分かった。教育した人材に辞められるのは会社として効率が悪い」と説明する。

 仙台駅の西口周辺で居酒屋4店を営む別の会社は23年9月、青葉区国分町の居酒屋を閉めて仙台駅西口に店を集約した。人手の足りない店に対する系列店からのアルバイトの応援派遣を効率的にできるようになった。

 同社は約40人のアルバイトを雇用しており、大半を大学生が占める。担当者は「今の大学生は昔のようにガツガツ稼ぐ人が少ない。店の集約は図ったが、バイト希望者が年々減っており、人材確保の不安は消えない」と頭を悩ませる。

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