仙台市泉区の将監小(児童346人)のPTA(会員266世帯)は2025年度から、入退会の「自由化」に踏み出す。そもそも入退会は自由の任意団体だが、実際には入会意思の確認や退会の手続きがないPTAが多い。事実上の「強制加入」はコンプライアンス(法令順守)上の問題があるとして是正。会員の減少を織り込み、「少しずつ力を出し合う」組織へのモデルチェンジに力を注ぐ考えだ。(せんだい情報部・佐藤理史)
会則に非加入世帯への差別禁じる項目も
10月11日の臨時総会で会則の改正案が採決され、賛成205、反対3で成立した。「会員は児童の保護者と教職員とする」とだけ定めていた条文に、入会申込書の提出や年度途中の入退会の取り扱いなどを追加。非加入世帯への差別や不利益を禁じる項目も、会則の活動方針に盛り込んだ。
同時に体制のスリム化も図る。会長と事務長の各1人を除き、本部役員の定数を削除した。各学年部会、保健体育や広報といった専門部会も廃止する。
代わりに幹事と顧問を新設した。幹事は単発、短時間の働き手「スポットワーカー」のような立ち位置で、企画のアイデア出しや写真撮影、催事当日の運営手伝いなどを担う。顧問は会長や役員の経験者が務め、相談事に対応する。
再編に伴い、年会費を1000円引き下げ、市PTA協議会の年会費を合わせて4000円にする。
加入率減少は覚悟の上 「罰ゲームのような負のイメージを変えたい」
PTA加入を巡っては、同意なく会費を徴収されたとして返還を求める少額訴訟が各地で起きている。2023年度に将監小のPTA会長に就いた阿部大(だい)さん(49)は「問題を残したまま、次の世代に引き継ぐことはできない」と改革を決意。22年度に「自由化」した宮城野区の田子小PTAの事例を参考に、地ならしを進めてきた。
スポーツ新聞風の会報「PTAタイムズ」をほぼ毎月発行。活動を身近に感じてもらい、コラムで現状の課題をざっくばらんに訴えた。
会則の改正案の要点について自ら解説した動画を制作し、ユーチューブで保護者に公開。問題意識が浸透し、圧倒的な信任を得た。
飲食店コンサルタントが本業の阿部さんは「仕事を嫌々やらされている組織が成果を生むことはない。子どもの満足度を高めるには、まずは保護者が『推し活』のように、楽しく気軽に関われる組織にすること」と説明する。
先行して「自由化」したPTAは、世帯加入率が5~6割に落ち込む現実がある。役員の担い手が確保できず、予算が減れば、これまでの活動が続けられなくなる恐れも否定できない。
「そうなっても仕方ない。参加するもしないも自由なので、皆が選んだ結果だ」。阿部さんは割り切りつつ、前向きにこう語る。「前例踏襲の催しを何度もやるより、大人も子どもも楽しい1回のイベントが心に残ることはあるし、金がなければ知恵を絞ればいい。明るいところに虫と人は集まるって言うでしょ」