SEALDs、朝日新聞の意見広告でも違法疑惑が浮上

嘘つき同士の、足の引っ張り合いだな。びでぇぜ。

 

本連載前回記事で、ゆうちょ銀行に不正な口座が多数存在する背景と、SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)の違法行為についてお伝えした。

政治資金規正法第8条は、政治団体の届け出前の政治活動に関する寄付または支出の禁止を定めており、SEALDsは2015年10月23日に政治団体の届 け出をしているが、実際はそれ以前から寄付やカンパを募っていた。つまり、形式的な面からいえば、同法に違反していることが確実なのだ。

唯一の逃げ道としては、「自分たちは政治活動を目的としていない任意団体だ」と主張し続ける方法があるが、昨夏の集団的自衛権に対するデモ活動などの実態から見て、これは難しいだろう。

政治資金規正法は、贈収賄など本人の証言がない限り立証が難しい案件を形式的に処罰するための法律であり、例外はほぼ認められていない。そうしなければ、違法行為を取り締まることはできないからである。

また、政治団体の届け出には、もうひとつ重要な意味がある。それは、税金の優遇措置を受けられるという点だ。政府は、憲法で定められた「政治活動の自由」を保障する意味も含め、政治団体の届け出をした組織に対して政治活動に関する税金の優遇措置を認めている。

SEALDsが単なる任意団体として寄付を集めたのであれば、個人事業主扱いになり、寄付やカンパに対して多額の所得税や贈与税を払わなくてはいけなくな る。さらに、SEALDsは15年9月15日に朝日新聞に「民主主義は止まらない。」などとする全5段の意見広告を掲載していた。当然、新聞に出稿するに はお金がかかり、SEALDsも朝日新聞に広告料金を支払ったはずだ。

しかし、当時SEALDsはまだ政治団体の届け出をしていないため、前述のように政治活動に関する支出は禁じられていた。これは、対価を受け取った朝日新聞側も責任を問われかねない。

朝日新聞の全5段広告ともなれば、定価ベースで約1500万円だ。その資金が、どこからどのように集められたのかも焦点になるだろう。

現在、SEALDsは政治団体の届け出を済ませているため、寄付や支出の内容については開示義務が生じる(5万円以上の開示義務、それ以下も台帳保管義務 がある)。今後は、この広告料金の件が明らかになる可能性もあるわけだが、そこで公表されている料金より著しく安かった場合は、正規の広告料金と SEALDsが実際に支払った料金の差額が、朝日新聞によるSEALDsへの寄付行為とみなされることになる。

政治資金規正法によって、政治団体は法人からの寄付が禁じられているため、そうなれば違法であると同時に、朝日新聞はメディアとしての適格性も問われることになるだろう。

また、SEALDsは街宣活動の際に全国労働組合総連合から街宣車を借りていた事実が発覚している。レンタル料を払っていたのなら問題ないが、もし無償で 借りていたということになると、これもSEALDsに対する全労連の寄付に該当する可能性があると同時に、全労連は団体のため、政治団体への寄付は違法行 為になる可能性がある。

筆者は、政治活動は自由に行えばいいと思うし、その自由を束縛するつもりもない。しかし、公からお金を集める以上、その運営には透明性が必要であり、不透明な使われ方は許されない。そのために政治資金規正法が存在するわけだ。

●筆者の取材に失態を認めたゆうちょ銀行

前回記事で触れたとおり、ゆうちょ銀行は届け出前の政治団体に対して、厳格な確認もせずに口座を与えていた。一般の銀行、特にメガバンクでは、これまでのさまざまな金融規制のなかで、任意団体の口座開設については、かなり厳しい審査が行われる。

任意団体の場合、その団体の目的や活動内容を明示したり、責任者などを明らかにしたりしない限り、銀行口座をつくれないようになっている。ましてや、団体 の目的が政治活動に該当すると想定される場合は、政治団体の届け出を確認しないで口座を与えるなど、本来ならあり得ないことだ。

なぜなら、12年の犯罪収益移転防止法の改正によって、「口座開設の際には、職業や事業内容、取引を行う目的などを確認しなくてはならない」と定められているからだ。

しかし、ゆうちょ銀行については、日本郵政公社の一事業であった「郵便貯金」の時代に監督官庁が総務省だったことから、その基準がゆるいものになっており、簡単に口座が開設できるようになっていた。そして、その“抜け穴”を悪用されていたわけだ。

この問題について、筆者がゆうちょ銀行に取材したところ、ゆうちょ銀行は政治団体の届け出を確認せずに口座開設していたという非を認め、文書で「政治団体 の新規の口座開設については、開設の申込みの際に選挙管理委員会への届出の有無を確認する態勢の整備等の準備ができ次第、速やかに実施することとしたい。 既存の口座については、当局から政治資金規正法に違反している旨の情報提供等を受けた場合や、外部からの情報提供を受け、法令に反して利用されていると確 認できた場合には、取扱いの停止や解約を依頼することとしたいと存じます」という返答があった。

「マネーロンダリングに関する金融活動作業 部会」(FATF)の「資金洗浄に関する40の勧告」や「9の特別勧告」(テロ資金対策)では、金融機関に対して、口座の開設や金融取引行について違法性 のある団体との取引を禁じ、個別の取引が適正であるかを監督する義務を付与している。

しかし、日本の金融機関のなかには、まだ対応が追いついていないところも少なくなく、その代表格がゆうちょ銀行だったともいえるわけだ。ただし、ゆうちょ銀行は日本郵政、かんぽ生命とともに15年11月に東京証券取引所第1部に株式上場している。

当然だが、上場企業であるということで、株主に対する責任も非常に重いものとなる。しかも、いまだに政府が一定の株式を持っているという現状を考える限り、一般の銀行以上に厳しい規制で運営されなければならないはずだ。

4月に公表された「パナマ文書」の影響によって、反社会的勢力によるマネーロンダリングや資金取引に関しては、国際的により厳しい規制が求められていくと思われる。そうした流れのなかで、ゆうちょ銀行は国際的なルールに対応することが喫緊の課題となっているわけだ。

SEALDsの問題をきっかけに、今後は素性の不明な口座は廃止または凍結されると同時に、透明化が一段と進むことになると思われる。

●SEALDs以外の団体でも違法行為が横行か

なお、未届けの政治団体による寄付やカンパ活動はSEALDsに限ったことではなく、全国に点在する反基地、反原発、護憲を主張する団体などでも、同様の行為が行われている。

前述のように、ゆうちょ銀行は今後「違法な口座は停止や解約を進めていく」と返答しているが、精査した上で「疑わしい口座」があれば、犯罪収益移転防止対策室(JAFIC)に報告されることになる。

また、任意団体として寄付やカンパを集めながら税金を支払っていなければ、脱税ということにもなる。その場合は国税局が動き、無申告であれば過去5年、あ るいは7年までさかのぼって税金が徴収されることになる。口座をつくる際には口座責任者を決めているはずなので、その責任者が多額の納税義務を負うことに なるわけだ。

国税の取り立ては非常に厳しく、口座残高がなかったとしても税金を払わなければならず、不動産など保有する資産はすべて差し押さえられる。自己破産をしたとしても税金の滞納分は免除されないため、一生重い十字架を背負うことになりかねない。

また、最近問題となっているのが、「反基地団体関連口座」といわれるものだ。これは、アメリカ軍の沖縄基地に対して暴力的な抗議活動や破壊活動、威力を伴 う妨害行為を行う団体の資金口座だが、そのような行為はアメリカの法律では明らかなテロ行為と認定される。したがって、そうした団体は今後、SDNリスト (アメリカの経済制裁の対象となる人や国、法人のリスト)に入れられ、金融取引が不可能になる可能性もある。

また、そのような違法行為を容認してきた日本政府の責任も重いといわざるを得ないだろう。言論や政治活動の自由は最大限に認められるべきものだが、違法であってはならないのである。
(文=渡邉哲也/経済評論家)

※画像は野党3党首が街頭演説。参院選、若者に支持を訴える(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

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