故・ジャニー喜多川氏の性加害問題に対するメディアの沈黙を取り上げたTBS系番組「報道特集」について、見逃し配信サイト「TVer」で自局を検証した後半部分が見られないとして、ツイッター(X)で波紋が広がった。
これもジャニーズ事務所の圧力や事務所への忖度ではないかとの憶測も流れているほどだ。一方、TBSでは、2023年10月10日中に後半部分も配信することを取材に明らかにした。
事務所からの横やりやジュリー前社長から圧力の証言も
7日夕放送の「報道特集」では、TBS社員ら80人以上を取材したとして、「ジャニーズとTBSの関係」について考察を加えた。
前半では、元ジャニーズJr.からの新証言など性加害の当事者やその周辺を取材した内容を伝えた。そして、後半では、TBSが4月までこの問題を報じてこなかった背景に踏み込んだ。
社会部記者ら10人にヒアリングしたところ、性加害を認定した高裁判決などを報じなかったことについて、圧力や忖度は全員が否定し、男性の性被害への意識が低く、芸能ネタと位置付けたのが大きいとした。このことに対し、当時のデスクは、職務怠慢だなどと自己批判した。
また、ドラマなどの制作・編成の現場では、約60人に取材した結果、圧力や忖度を否定した元プロデューサーらもいたが、事務所から気に入らないとタレントを引き上げるとされた、事務所とトラブルになって番組を打ち切られたと聞いた、といった証言が出た。中には、この1年にも藤島ジュリー景子前社長からの圧力があった、との告白も出たとした。
TBSの日下部正樹キャスターは、「ジャニーズという巨大な帝国を作り上げたのは、間違いなくテレビ局です」と断じ、被害者の救済を見届けるべきだとして、「記者会見で拍手している場合ではないんです」と一部記者に苦言を呈した。
番組では、TBSに取材力の足らなさや人権感覚の鈍さがあったとして、会社としても関係者へのヒアリングを行っていくことを明らかにした。
「ジャニーズ事務所への配慮などはありません」
自局の検証までした番組の内容について、ツイッター上などでは、評価の声が上がるとともに、まだ物足りないとの意見も相次いだ。
ジャーナリストの江川紹子さんは、「真面目に検証しているのは分かるが、なんかしっくり来ない」と漏らし、「こちらの局の方々は、『不当な圧力』にはいざとなったら戦うと思っているみたいなんだけど、小さな理不尽を放っておく風土がある組織でそれが可能なのか」と疑問を呈した。
もっと厳しかったのは、元放送作家でYouTuberの長谷川良品さんだ。「ほぼ自局を正当化するための言い逃れに終始」「『結局、何?』でしたよね。しかも前半は素材の焼き直しばかりでした」とツイッターで指摘し、TVerには前半のみしか番組動画が上がっていないと批判した。
後半がTVerにないことについて、ツイッター上では、「事務所の何がそんなに怖いのだろうか…」「未だに何らかの忖度・癒着があるとしか思えない」と憶測が流れた。もっとも、「編集やり直しとかかな」「前編と後編でタイムラグが数日あったと思います」と冷静に見ようとする向きもあった。
なぜ後半がTVerにないのかなどについて、TBSの広報・IR部は10月10日、J-CASTニュースの取材に対し、次のように回答した。
「特集の後半部分は作業上の都合で本日の配信となりました。まもなく配信する予定です。ジャニーズ事務所への配慮などはありません」
TVerでは、「事務所とテレビ局の関係は」と題して、後半についても10日夜にアップされた。