Petrelの「2018年インスタ流行語大賞」によると、2018年に若者に人気だったワードは、以下のようになっている。
「3150」「なんちゃってダンス」「アム活」「水鉄砲メガホン」「広告で有名になりたい」「金晩」「フッカル」「一生パリピ」「カントゥーヤ」「どんつき同盟」「いいアゴ乗ってんね」「きょコ」「チル友」「オベンタグラム」「けしからん風景」「ネタプリ」「テッテレー」「さいくぅー」「モニグラ」「ヨルグラ」「フリクロ」。
まず気がつくのは、「なんちゃってダンス」「いいアゴのってんね」「広告で有名になりたい」など、いま流行中のTikTok発のワードが目立つこと。そのほか、「モニグラ・ヨルグラ(モーニングラム、ヨルグラム:朝活、夜活)」「オベンタグラム(お弁当写真)」などのInstagram発ワード、「#さいくぅー(最高)」「#3150(最高)」「#きょコ(今日のコーデ)」など、SNSでハッシュタグ付きで利用されるワードが多いのも特徴だ。
皆さんは、この中にある「#広告で有名になりたい」をご存知だろうか。今どきの若者たちがこのハッシュタグを使う心理と危険性について解説する。
「#広告で有名になりたい」が人気
動画共有サービス「TikTok」が人気だ。ユーキャン2018年「新語・流行語大賞」にもノミネートされており、今年最も勢いがあるアプリと言っていいだろう。
TikTok「#広告で有名になりたい」
TikTokでは、ハッシュタグ「#広告で有名になりたい」をつけた動画は32億回視聴されている。以前もご紹介したとおり、もともとTikTokで実施されたキャンペーンであり、「広告で有名になりたい」のバナーやメッセージをクリックして、同意書を確認の上、このハッシュタグをつけて投稿すれば同アプリの広告に出られる対象となった。
このハッシュタグだけでなく、「#おすすめにのりたい」などの類似ハッシュタグを同時につけているユーザーも多い。「#おすすめにのりたい」は11億回、「#有名になりたい」は6億8300万回、「#大人気になりたい」は8億4200万回再生されている。
アプリ内の「おすすめ」欄に載るとフォロワー以外の多くのユーザーの目に触れるため、「いいね」やコメントが増えたり、フォロワーが増えることにつながる。
「広告で有名になりたい」はキャンペーン名だったが、同時にユーザーの願望を表していたのだ。「有名になりたい」「人気者になりたい」は多くの若者たちに共通する願いであり、そのためには積極的に広告に載りたいし、おすすめにも載りたいと考えるのが今どきの若者というわけだ。
「#地上波にでたい」キャンペーン
最近では、アプリゲーム「プレカトゥスの天秤」とのコラボで、「#地上波にでたい」というハッシュタグをつけて課題に沿ったTikTok動画を投稿すると、選ばれた投稿者はフジテレビの地上波番組に出られるというキャンペーンを実施している。
「#地上波にでたい」がついた動画は、1億6300万回視聴されている。このように有名になれる系の報酬があるものが人気のため、選ばれた動画は「テレビ番組で紹介される」「渋谷の街頭ビジョンで放映される」などと掲げたキャンペーンが増えているのだ。
このハッシュタグが使われているのは、TikTokだけではない。TwitterやInstagramでもこのハッシュタグをつけたTikTok動画が多数投稿されている。これによって他のSNSでの交友関係を巻き込めるため、拡散力が高まっているというわけだ。
ネット上で人気者になりたい若者たち
米Clapit調査によると、ミレニアル世代は有名になることを何よりも望んでいる。「有名になれるなら仕事を辞める」という回答は25%以上を占め、「弁護士になるより有名になりたい」「医師になるより有名になりたい」はそれぞれ30%、23%に及ぶ。さらに、「大学卒業資格を取るより有名になりたい」も10%、「有名になるためには家族と縁を切る」も8%いる。
これはミレニアル世代を対象とした調査だが、10代になればこの傾向がさらに強いことは容易に想像がつく。日本でも、小中学生のなりたい職業に「YouTuber」がランクインしており、ネットで有名になることを強く志向している10代の実態がよく分かる。
小学3年生の息子は、「インスタの動画で数百回視聴された」という話にはしきりに感心していたが、「医師」「弁護士」には特に反応はなかった。「数百人が見た」という話は実感として理解できるが、社会的地位については理解できていないのだ。息子の理解できる範囲では、社会的地位よりも数百人に注目される方が価値があるというわけだ。10代の価値観は、これとあまり大差はないのかもしれない。
居場所・承認される場を見つける手伝いを
承認欲求の塊であり、ネットを使えばそれが簡単に実現する可能性があることを知っているのが、いまの10代だ。だから簡単に動画を投稿してしまうし、注目を集めるためなら過激な行動にも走りがちだ。
炎上を起こしたり、犯行予告やハッキングなどをしてしまう理由も、「注目を集めたい」「すごいと思われたい」「フォロワーを増やしたい」という理由のことが多い。注目されたい願望が暴走した結果、不幸な結果につながってしまったにすぎない。
自分の子どもには、安易に顔を出した状態で動画を投稿してほしくないと考える保護者は多いだろう。しかし、子どもは注目されたいと強く願っているため、禁止しても隠れて投稿されてしまう可能性がある。
子どもにはそのような動画を投稿するリスクを正しく伝えるとともに、個人情報管理の大切さを教えてあげてほしい。同時に、部活動や習い事など、子どもが承認される場や居場所を見つける手伝いもしてあげてほしい。