W杯の“戦犯”と免停のキムタク。広告業界での罪状はどちらが重い?

サッカー日本代表がギリシアと引き分けて、崖っぷちの状態であるようだ。私なんぞは「日本を代表し、みんな一生懸命頑張ってくれているんだから、それだけでいいじゃないか」などと、つい思ってしまうのだが、ちょっとサッカーを知っている人たちからすれば、いわゆる“試合中に冴えないプレイをした選手”が数人はいるようで、ちまたでは「やれ誰がダメだった」だの「やれ誰がアソコでこうしていれば良かった」だのといった“戦犯さがし”が始まっている。
ギリシャ戦が終わった直後、いつものように喫茶室ルノアールに行くと、となりで打ち合わせをしていた広告関係の仕事をしているらしき男性二人が、こんな世間話を交わしていた。
「今日の○○と○○、全然ダメだったよね(※○○=選手の名前)」
「ですよねー。これじゃあ○○や○○を(CMで)使っていた××とか××の商品、マジ売り上げ下がっちゃうんじゃないですかねえ?(※××=企業名)」
そりゃ冗談にしてもあまりに酷な話ではないか、と私はその選手たちが可愛そうになった。そこで、ふと数年前にあった“ある事件”が頭をよぎった。
「人気グループ・SMAPのキムタクこと木村拓哉が2度にわたり、自動車運転中にスピード違反で摘発され、免許停止の処分を受けていた」
ことに対し、当時木村をCM起用していたトヨタ自動車の広報部は、
「2度とも代理店を通じて報告をいただいております。私どもとしては交通ルールの違反は誠に遺憾」
としながらも、今後の起用に関しては、本人の反省をふまえ「今の時点では放送中止や契約打ち切りなどは考えていない」と継続の意を示した、というスキャンダルである(現に今もなお、トヨタとキムタクの“良好な関係”は続いている)。
当時のトヨタ側の措置が「大甘」なのか、それとも「こんなもんでしょ」なのかは、さまざまな意見があっただろう。そして、駐車違反を繰り返したり、故意ではないにせよ、一方通行路の逆行やUターン禁止区域でのUターンとかをしでかしてしまったことだって何度もある私としては、木村のモラル観を問いただすつもりもないし、また権利もない。……といった前提を述べたうえで、私なら
「スピード違反で免停をくらったキムタクが宣伝する車を買うか・買わないか?」
を客観的に今一度じっくりと考えてみる。
私は基本、車には執着のない人間だ。家から遠い場所にあるグラウンドで草野球の試合があるときは「車があればイイな」と思うけど、なければないでさほど不便さも感じない。性能で気になるのは“燃費”くらいで、スピードが出る出ない……とかにはまったく興味がない。いや、けっこう重度のスピード恐怖症である私的に“速い車”というのは、むしろマイナス要素だったりする。
そんな私にとって、べつだん好きでも嫌いでもないキムタクが「この車、オススメですよ」とアピールする車は、「買いたくなくなる車」である。「この車は運転してたら、知らぬ間にスピードを出したくなるのか……」なんて、わりと真剣に一抹の不安を抱いてしまうからだ。逆に言えば、木村が仮に日本代表選手だったとして、その彼がたとえ一次リーグ敗退を決定づけるオウンゴールの大失態を犯したとしても、こういう着眼には到らないだろう。
私のような思考パターンを持つ人間が“変人”に属するのか、意外と多数派なのかを私自身が判定するのはむずかしい。が、トヨタは当時のキムタクCM起用継続によって、私という最低でも一人のユーザー候補者を失ったわけだ。
たった2試合だけで、たまたま結果を出せなかった人が売り上げ云々と揶揄されて、一方ではCM商品とダイレクトに直結する小犯罪を犯した人が野放しになっている……つくづく理不尽な世界である。広告業ってヤツは……。
(山田ゴメス)

タイトルとURLをコピーしました