東北の高速道路の無料化が31日に終了することに、反応がくっきりと分かれている。負担が増す東日本大震災の被災者は、継続を切望。マイカー利用を当て込んでいた観光地も落胆を隠せない。一方、バス業界は利用客が戻ってくると期待する。
◎トラック/コスト増が心配
無料継続を強く求めているのが、コスト増を懸念するトラック業者だ。
仙台市の食品輸送会社、東配の阿部忠則社長は「震災復興には無料化の継続が必要」と強調する。
首都圏などから東北に向かうトラックは、沿岸部の水産加工会社の復旧遅れもあり、空荷で帰るケースもあるという。このため高速料金の負担感は増している。阿部社長は「業者が東北向けの運送を嫌って、食品搬入が滞りかねない」と危機感を募らせる。
◎高速バス/客足回復に期待
バス業界は対照的だ。高速バス15路線を運行する盛岡市の岩手県交通は「乗客が1~2割減った。混雑でダイヤが乱れたのも痛かった」と無料化の影響を説明。4月以降については「バスの利便性と経済性を見直してもらいたい」と話す。
一方、土日祝日の自動料金収受システム(ETC)利用限定で無料化対象となった日本海側の観光地では、福島第1原発事故の風評被害の本格払拭(ふっしょく)に向け、無料化継続を望む声が根強い。山形県観光物産協会は「観光客の減少を食い止められた。これから増加に転じる好機なのに」と語る。秋田観光コンベンション協会も「4月以降も無料が続けば、経済波及効果は大きくなるはずだった」と話す。
今後は高速有料化で一般道の利用増が予想される。宮城県内の国道4号沿いにあるコンビニエンスストアの店長は「通行量の増加は大歓迎」と期待感を示す。
◎被災者/時間・料金負担に
「財布への負担を考え、今後は一般道を利用する」
石巻市の自宅が被災し、仙台市宮城野区の借り上げ仮設住宅で暮らす大学職員鈴木宏享さん(26)は残念がる。石巻市の職場まで三陸自動車道を使って通勤していたが、有料となれば往復1700円掛かるためだ。
一般道利用に比べて短縮されていた通勤時間も、片道1時間半前後に延びる。「自分のような人で一般道路は一層混むだろう」とラッシュ時への不安を募らせる。
東松島市の仮設住宅から週に数回、子どもの習い事の送迎などで仙台市に出掛ける漁業鈴木光博さん(44)は「三陸道が有料に戻れば1カ月当たり1万円以上の負担増」と言う。ノリ養殖の仕事は秋まで再開できない。「収入が不安定な中で出費がかさむのは厳しい」と嘆く。
利便性が失われることへの不満も広がる。宮城県山元町の仮設住宅で暮らす主婦上原和子さん(63)は、同県亘理町の病院への通院などで日常的に常磐道を使用してきた。「病院まで常磐道なら10分で行けるが、一般道なら30分かかる」とため息をつく。
一方、災害ボランティアを対象とした無料化措置は、6月末まで続く。受け入れ先の自治体ともども、恩恵が大きく、関係者は胸をなで下ろしている。
岩手県沿岸部の復興支援に当たる遠野市のNPO法人「遠野まごころネット」の柳沢亮さん(38)は「今も全国からボランティアが駆け付けており、助かる」と感謝する。