東日本大震災で被災した東北の若者を支援しようと、会津白虎隊の隊士の子孫が中心になって、奨学金を支給する。戊辰戦争に敗れた会津の復興を支えたのが教育。会津がたどった苦難の歴史と震災を重ね、東北復興に立ち向かう若い人材の育成につなげる。
奨学金設立の中心になっているのは、東京の会社社長飯沼一元さん(68)=仙台市出身=。白虎隊の隊士で唯一生き残った飯沼貞吉(1854~1931年、後に貞雄と改名)の孫に当たる。
飯沼さんは「戊辰戦争後、会津の不遇の時代を教育が支えた。震災で被害を受けた東北の子どもたちにも、復興の志を高く持ってほしい」と呼び掛ける。
飯沼さんが支援を決めた背景には、祖父のことがある。貞雄は戊辰戦争後、戦った相手の長州(山口県)藩士の世話を受け、勉学の環境を与えられたからだ。
同じ白虎隊の隊士で後に東京、京都帝大総長を務めた山川健次郎(1854~1931年)も、長州藩士の世話を受けて勉学の機会を得た。
飯沼さんらは既に奨学金支給のために「海の会」を結成し、選考作業を始めた。賛同した飯沼さんの母校東北大の同級生や「白虎隊の会」(東京)の会員ら約30人が資金を出し合う。
奨学金の対象は、首都圏の大学などを目指す15~22歳。1人につき年間100万円程度の支援を2~4年間続ける。数人に支給する予定で、卒業後も返済を求めない。都内で定期開催する交流会などで学習状況を報告してもらう。
「自分の将来」などの小論文で書類選考し、9月上旬の面接で決める。飯沼さんは「東北の復興に強い関心がある若者に手を挙げてほしい。交流会などを通じて顔が見える関係で経済的、精神的にバックアップしたい」と話している。連絡先は飯沼さん090(4660)4407。