風化 時間経過、薄れる関心 あらがう被災地、焦り

 関連死を含め2万人を超える犠牲者を出した東日本大震災は、発生から3年がたった。被災直後はメディアで大きく取り上げられたが、時間の経過とともに、全国的な関心は薄れてきた。震災風化という見えない脅威にあらがう被災地の現場を歩いた。(報道部・亀山貴裕)
●「特設」姿消す
 仙台市宮城野区のヤマト屋書店東仙台店では、入り口前の「一等地」にあった震災関連書籍の特設コーナーが昨年10月に姿を消した。現在は話題の新刊やコミックが並ぶ。
 同店の本社は最大被災地の宮城県石巻市にある。震災時の店長で書籍事業部マネジャー遠山尚秀さん(34)は「震災直後にコーナーを設けた。多くの人が震災本を手に取り、食い入るように読んでいた」と振り返る。
 多い時は500タイトルが並んだが、震災から1年半が過ぎたころ、顧客の反応が鈍くなった。
 「震災はそろそろいいのでは」。「書店のお薦め本を読みたい」。そんな声が遠山さんの耳に入り、ついに特設コーナーの切り替えを決めた。「震災への関心が宮城ですら薄れていくのは寂しい」と語る。
 福島県南相馬市原町区の契約社員高村美春さん(45)は、福島第1原発事故の体験を「語り部」として全国に伝える活動を続ける。ことし2月、被災地支援の交流事業で九州を訪れた際、原発事故の現状を知らない人が多いことに肩を落とした。
 「九州の地元紙を読むと原発事故の記事は載っている。それなのに読まれていないようだった。アンテナを張る人が減っている」と感じた。
 原発再稼働が争点だった東京都知事選にも注目したが、低投票率(46.14%)に驚いた。「東京では原発事故は終わったかのようだ」
●解体後 客減る
 復興の盛り土工事が始まった気仙沼市鹿折地区。津波で流された大型漁船「第18共徳丸」があった跡地には付け替え道路が造られ、昨年10月に解体された船体の面影はない。その場にあったことすら知るすべはない。
 被災地ツアー客でにぎわった近くの仮設商店街「復幸マルシェ」の塩田賢一代表理事(47)は解体後の観光客減少を肌で感じている。
 「あの大きな船を1度見れば、津波の脅威を現実味を帯びて理解してもらえた。何もかもが除かれ整地されたら、この地の震災の記憶は残せない」と塩田さん。忍び寄る風化に焦りを隠さない。

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