「ハ木君!。」
不機嫌そうな感じで僕を呼ぶ声が聞こえた。その声の主はやはり社長であった。何の用かと思い社長室に向かった。
「八木君、机の上のメモ、しまいなさい。あんなもの、どういう理由なんだ!!。」
僕には、ちょっとした出来事や忘れたくない事などを克明にメモを取る癖があった。そのメモのなかには、社長が檜木さんを強姦したこと、北陸社の早川と付き合っていること、宗教にはまっていることなどなど、さまざまなことを克明に書いているのであった。
そういえば今日の午前中はMETで住宅展示場の会議があり、不注意にもその間、メモを会社の机の上に置忘れていたのだった。何ということか。よりによってそれを社長に見られてしまうなんて。心底ヤバイと思った。
「そのメモをもってきなさい。」
社長の冷たい声がした。メモを取ってきた。その場で見せた。
「お前は俺に恨みでもあるのか。こんなこと誰から聞いたんだ。」
聞いた人の名前を出すとその人に迷惑がかかるので、この場は
「会社の大体の人は知ってます。」
と答えた。社長ははなっから信じていない様子だった。しかし、この件は知らぬ、存ぜぬと言い続けないといけないのである。1時間ほど経って、やっと解放された。そして、そのメモを捨てるように言われた。
この一見のあと、社長は僕に近づくことはなかった。そして、陰険な嫌がらせが始まった。