宮城県白石市などの製麺業8社でつくる奥州白石温麺(うーめん)協同組合が、登録商標「温麺」の管理を強化している。組合に加盟していない業者が無断で使用し、商標権を侵害する事例が後を絶たないためだ。組合は無断使用の業者に抗議する一方、白石温麺のブランド強化にも乗り出した。
組合は2月下旬、「トマト温麺」という商品が商標権の侵害に当たるとして、岩手県内の業者に文書で抗議。製造販売の中止などを求めた。
業者側は回答文書で、諸般の事情から商品の製造販売を中止したと説明。だが、「温麺」の表記については「一般的な麺料理の名称、調理方法を表す用語にすぎず、商品表示としての識別力を発揮するものではない」とし、商標権侵害には当たらないと反論した。組合は法的措置も視野に入れ、交渉を続ける方針だ。
組合は1984年に登録した「温麺」など12種類の商標権を所有し、他に3件の商標を出願している。最近10年間で商標権侵害に当たるとして抗議したのは7件に上る。
組合の代理人を務める大津洋夫弁理士(東京)によると、「温麺」は本来、「温かい麺」という意味の普通名称。しかし、約400年の歴史があるとされる白石温麺は長年の使用で白石地方の名産品と認知されているため、商標法3条2項に基づき、例外的に商標登録が認められたという。
大津氏は「温麺は普通名称化しやすい商標。誰でも使えるようになれば競争優位性が失われ、白石温麺のブランドは大きなダメージを受ける」と指摘。類似商品との差別化を徹底するため、登録商標の使用基準を明確にするよう助言する。
これを受け、組合は麺の長さや太さなどの統一基準を定める方向で検討を始めた。吉見光宣理事長は「ブランド力に磨きをかけ、白石地方の食文化である温麺をさらに発展させたい」と話している。