東日本大震災で甚大な津波被害を受けた仙台市若林区荒浜地区の農業復興を目指す「荒浜プロジェクト」が、2013年2月の始動から2年目を迎えた。1年目は復旧農地で3年ぶりに大豆を収穫した。農地を集約して管理する検討も進む。16日には市内2カ所で、1年間の報告を兼ねて荒浜産大豆の油揚げなどを販売する「復興感謝のつどい」を開く。
プロジェクトは荒浜の被災農家約180戸を仙台農協と東北大、市、県がサポートする形でスタートした。荒浜は災害危険区域に指定され、農家が市内に分散。耕作を受託していた農事組合法人も解散し、農業の存続が危ぶまれていた。
荒浜の農地は180ヘクタールで、被災した市東部全体1800ヘクタールの1割に当たる。13年度は復旧した85ヘクタールで、大豆の作付けを再開させた。
除塩後も農地は地盤沈下で水はけが悪く、湿害と塩害の影響が残る。大豆の10アール当たりの収量は45キロと、震災前の3分の1程度にとどまった。
14年度にはコメの作付けも再開し、大豆と合わせて70ヘクタールを耕作する予定。残りの農地では、10アール区画を9倍に拡大する圃場整備事業が始まる。
プロジェクトのメンバーで荒浜集落営農組合長の遠藤伝さん(59)は「久しぶりのコメ作りだが、実際やってみないと分からない不安がある。7割程度の収量が目標だ」と慎重に話す。
組合は15年1月の農業生産法人化を目指す。各戸から農地を借り受け、一括して耕作を請け負う。専従者も雇用する。プロジェクト事務局の仙台農協の担当者は「収益性の高い農業への転換を図り、担い手も十分に確保したい」と語る。
16日の復興感謝のつどいは、宮城野区の仙台農協農産物直売所「たなばたけ高砂店」と若林区の同農協七郷支店駐車場で開催する。
販売する荒浜産大豆の油揚げは、荒浜で営業していた海野豆腐店の監修で製造する。油揚げをしょうゆと砂糖で煮た荒浜名物の精進料理「に」の無料試食もある。
七郷支店会場には、荒浜住民の交流の場として喫茶スペースを設ける。両会場とも午前11時~午後2時。連絡先は仙台農協震災復興推進課022(236)2435。