その目の日刊工業新聞には、とても興味深い記事が載っていた。佐々木広告社の親会社であるアースリースがバブル崩壊で、大変な負債をしょい込んだというものである。その額は2000億とも4000億とも言われていた。もし、アースリースが倒産したらどうなるのか?、社員の大体は理解していた。
実は、この件はアースリース拒当の根掘部長と製作担当の僕は一年ほど前から分かっていた。
その目は、やたら電話が多かった。その電話のほとんどは各媒体の皆様で、内容は「もしアースリースが倒産したらお宅も倒産するのか?」ということであった。はっきり言えばその通りなのであるが、それはロが裂けても言えない。
「大丈夫です。」
この言葉をただ繰り返した。
その日も終わり、ただなんとなく根掘部長と飲みに行った。根掘部長はとんでもない話を切り出した。
「実は社長から別会社を作んないかって言われてる。社長はアースリースが倒産すると思ってるみたいで、倒産したら自分の財産すべて取り上げられるから、自分だけよければいいと思って、俺が社長をやって別会社を作ってそこに財産を隠すつもりなんだな。こんな考え方じゃ、うまく行くものもうまく行かなくなるぜ。もちろん、俺は断ったけど、とんでもないおやじだな。」
根掘部長は吐き捨てるように言い、グラスを重ねて行った。
「断って大丈夫なんですか?。あの社長の事だから、報復がありますよ。」
「別にいいよ。別会社作ったところで、タイミングをみて俺は首になるんだから。」
僕は、またとんでもないことを聞いてしまったと思った。社長は会社や社員を守る気は一切なかったのである。株主の皆さんに言ってってやろうか、とも思ったが、あとで何かされるのも嫌なので、何も言わず黙っていた。
その後、この話を蹴った根掘部長は左遷させられたのは言うまでもない。