この会社は今まで何をしていたんだ?

 入社してもう一つ驚いたことはワープロがない事だった。僕は新田自動車の仕事の関係上、企画書を作ることが大変多かった。しかし、この会社にはワープロはない。今までこの会社はどんなことをして来ためであろうか。企画書を作ったことがあったのだろうか。僕は少し不安になっていた。それで、常識的な知識人である青竹さんに素朴な質問をしてみた。
  「この会社にワープロないんですか?。どうやって企画書作ってたいんですか?。」
  「日本語タイプライターみたいものがあるでしょう。これで作っていたんだよ。本格的なものは作れないけどね。必要とあれぱ自分のを使っていたんだけどね。それに、まともなスポンサーなんてなかったから口約束だけ。でもね、新田自動車みたいに一流のところはちゃんとしないとだめだろうね。そうは言っても、経理にコンピュータすら入ってない会社だもの、上の人達は、まだワープロなんて使うなんて考えてないでしょう。」
  「今までのデータはどうしていたんですか?」
  「データなんて取ってないよ。今まで+数年のあいだにやった仕事のサンプルすらない会社だもの、必要ないんでしょ。」
 青竹さんは少しあきれた口ぶりで教えてくれた。そうか、確かにこの会社に、以前どんな仕事をしていたとかは、一切残していない。ということは、以前のデータを基にして、新たな戦略を立てるとかしないのだろうか。僕はまたたずねた。
  「お客さんに提案するときはどうしてたんですか?。」
  「勘とハッタリ。飛び込み主体の営巣スタイルだもの、必要なかったのさ。」 
 僕は目の前にある仕事を片忖けるために、自分でワープロを買おうと思ったが、馬鹿らしくなったので、友達のワープロを借りて仕事をすることにした。石器時代の会社に入ったんだろうか。自分が情けなくなった。仕方がなく無い物ねだりはしないで、この器のレベルで仕事をすることにしたちょっと悲しい会社の実態だった。

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